真の健康を取り戻し、発毛を促す

 先に述べたように、毛髪は付属器官に属し、その生命力は体内の真の健康に左右されます。健康な時には大いに成長し、健康を損ねると成長が滞ります。 
 従って、健康な毛髪を生成・成長させる為には、まず心身の健康を損なわないよう予防に徹すること、そして健康を損ねた場合は、化学薬品を使って一時的に病状を抑えるというようなものではなく、自然治癒力を利用して真の健康を取り戻すということが必須条件になります。
 それには自己管理をいかに徹するかが、重要な課題となりますが、その原点は人間本来の生活を取り戻し、本能を癒す事にあります。


(1)体温維持と部分浴
 人間の気を充実させるのは腸で、恒常性維持機能を左右するのは、心と脳・神経、そして内臓です。毛髪の健康を保つにはこれらを常に活性化し、正常に機能させなければなりません。
 「足は第二の心臓」「手は第三の心臓」とも言われ、頭皮と共に体液の末梢となる部分で、漢方では経穴の集合部となっていますが、部分浴はこれらの末梢部における血液の浸透圧を改善し、静脈還流を促し、恒常性維持機能を活性化して自己治癒力を強化します。

 @温足浴法
塩又は塩を主成分とする入浴剤を入れた温湯に足を入れ、温めることにより末梢血管を拡張し、足の毛穴、汗口から毒素、老廃物を排泄し、下肢によどんだ血液を温めを内臓に戻すことにより自己治癒力を補助し、体内の生理機能及び、皮膚の生理機能を活性化し発毛を促すのが温足浴法です。
内臓の働きが活性化するとセロトニンが分泌され、ストレス等により引き起こされたアドレナリン作用が抑制され、副交感神経が支配するようになります。(食事の後眠くなるのは、この現象によるものです。)
 このような状態を「平穏心」「平常心」という言葉で表しますが。
 温足浴法を発毛に導入することにより、ストレス、神経の酷使等に起因する脱毛症には著名な効果を得ており、他の脱毛症においても温足浴法を併用するのとしないのでは、極端な差が生じます。
 温足浴を実施すると、末梢部が温められ、下肢に留まった「よどみ」が改善され、体温は平均0.5〜1℃上昇し、頭皮の温度も3〜5℃上昇し、又、病気や冷え、のぼせによって異常に高まった体温を平常に戻す事もできます。

 A半身浴
 従来の首まで、又は肩まで湯につかる全身浴は、効果が望めないばかりか、効果を得ようと長時間入浴するとのぼせてしまい、心臓にも負担がかかります。
 下半身浴の実施法として、40℃以下(慣れれば39℃)のぬるま湯にへそ位までつかり、30分以上時間をかけ、リラックスするつもりで入浴することが基本ですが、できれば1時間ぐらい入浴するとはっきりとした効果が得られ、しかも「のぼせる」ということはありません。もし、のぼせるようであれば、お湯の温度が高いか、湯量が多い場合が多いので、必ず湯温、湯量を確認して下さい。

 今、「シャワー」だけで入浴しまう若者達が増えています。
 シャワーの習慣は、比較的「冷え」の少ない欧米人のすることであり、石けん、ボディソープ等で体表に付着する老廃物と一緒に、大切な皮脂を洗い落とし、丸裸にされた表皮は「朝シャン」をした頭皮と同じようなもので、保温効果は半滅します。
 そこへ温湯をかけると一時的に温まった感じはしますが、体表だけのことで深部は温まらず、体表から発散する気化熱の為、逆に体温を下げる結果になります。
 「カラスの行水」と言われる入浴法も、シャワーと同じ結果になるという事も認識していただきたいものです。

 B手先の湯(手温浴)
 常に使われている手先でも、末梢になると血液の「よどみ」が生じ、よどみが生じれば静脈の還流が悪化し、血流がスムーズに行われなくなり「冷え」を起こします。
その為にひび、あかぎれ、しもやけ、手荒れとなって現れます。
 昔から「冷え性、ぜんそく手先の湯」と言われるように手先の血流を促し、よどみを改善すれば心臓から上部に位置する組織の働きをスムーズにすることができます。
 特に、円形脱毛症、全頭脱毛症には顕著な効果が得られ、「温足浴法」と併用すれば更に高い効果が得られます。
 実施法として食器洗い桶等、多少深めの容器を用意し、10cm程の深さに温湯を入れ、塩、又は塩入入浴剤を入れ、この中へ両手を入れ温めますが、更に同じような容器をもう一個用意し、その中へ冷水を同量入れておきます。この場合の湯の温度は45℃前後と少し熱めにしておき、「先に湯の中へ両手を入れ、5秒程経過したら、冷水へ同じように5秒程入れる」この行程の繰り返しを15〜20分間前後行います。
 この方法は、手先の皮膚を鍛錬する目的で昔から行われていますが、この「温」「冷」交互の刺激が末梢血管の拡張→収縮を繰り返し、制御振動を起こさせ、循環器系を刺激し血流の活性を促します。

 Cスチーミング(頭皮温蒸浴)
 スチーミングは、温度の低下した頭皮に温蒸気を当て、温める部分浴のひとつで、理美容業界では多方面に応用され、次のような効果があります。
@低下している頭皮温度を上昇させ、頭皮の血流を活性化し、動脈の栄養と酸素と水の運搬効率を上げる。静脈還流を促して、頭皮組織に残留する老廃物、毒素の排泄を促し、動静脈吻合を解除し、腺組織の生理機能を高める。
A体温調節機能の働きで発汗作用を促し、毛穴を開口させ、マッサージの際の固脂、老廃物を揉み出し易くする。
B頭骨の温度を正常域まで上昇させ、頭皮温度の低下を防止する。
C蒸気を与えることにより毛表皮、毛皮質の組織結合を緩和させ、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力の結合力による発毛促進剤、育毛補助シャンプー等の養分の吸着力を高める。
D毛表皮を一時的に開かせ、毛皮質へ水分を補給し、毛髪の保湿を補助する。



(2)誤った自己管理を改める
@宇宙が支配する睡眠の時間帯
 一部の夜行性の動物を除き、大半の野生動物は太陽が昇り始めると目を覚まし、活動を開始し、太陽が沈むと睡眠に入るという、宇宙の法則に従った生活のリズムを持っています。

 (4の12図)に示すように、「日中の脳神経は交感神経の支配となり、大いに活動し、夜間は副交感神経に支配されて、睡眠に入る」という動物的本能の摂理は、人間の有史以来の法則ですが、今後、何十年、何百年と歴史が変わろうと、この摂理は変わることありません。
 睡眠は、脳にある小指の頭ほどの「小果体」から分泌するホルモン「メラトニン」と、大陽から発生する光線帯域に属する電磁波に密接な関係があります。太陽から発生している電磁波の地上に到達する強度は、太陽が真上にある正午前後が最も強く、太陽が地球の裏側を照らす午前0時前後が最も弱くなります。
 電磁波の強度と逆に、「メラトニン」分泌量は、太陽からの電磁波の強度が弱まってくると分泌し始め、真夜中の午前0時前後が最も多く分泌するとされています。
 「メラトニン」が分泌されると、脳は副交感神経支配となり、眠気を催してきます。従ってこのホルモンを「眠りのホルモン」とも言うのですが、このホルモンが分泌されるにも関わらず、眠らずに活動するということは宇宙の摂理にも反することになり、徒らにノルアドレナリンの分泌を増加し、毛髪の生成を始め、生理機能に悪影響を及ぼします。

 血液の循環から考えれば、体を横たえるという事は、足のつま先から頭皮まで、体全体に平均に行われるようになります。従って「立っている、座っているという事は、引力の為に血液が下肢によどみ、頭皮には充分な血液が供給されにくい。」という脱毛の要因が解消されますが、さりとて寝てばかりでは、体全体が廃用性萎縮の危機にさらされてしまう事になりかねません。
 ここに生活のリズムを規則正しくしていく必要性が生じるのです。
 「1日24時間を3で分割し、8時間働き、8時間睡眠をとり、残り8時間は自分自身のための時間とする」これが理想の生活リズムであり、現代の不眠不休の機構体質から発生する企業型脱毛症は、これ等のプロセスが要因となっていると言っても過言ではありません。現代の生活リズムの狂いは、子供達まで悪影響を及ぼし、円形脱毛症、全頭脱毛症という結果にも表れています。


A朝食の重要性
ひと昔前の人間は、太陽が昇り始め、小鳥がさえずり始まると目を覚まし、待ち遠しいくらいに空腹を感じて、朝食はしっかりと摂ったものです。そして日中は一生懸命に体を使って働き、汗をかいて、再び空腹感を覚え、「ドカ弁」由来の昼食をしっかり摂って、夕陽が沈む頃は再び空腹感を覚え、夕食を摂り7時〜8時頃は完全に睡眠に入るという、正に動物的なライフサイクルを持っていました。これが人間の摂理からくる生活のリズムであって、この頃の人達は自己治癒力が活発だった為に、現代の人達から見ればかなり粗食な割にエネルギッシュな生活をしていて、若禿などはほとんど見る事はなかったのです。
現代人は本来は眠らなくてはならない深夜まで仕事をし、遊び、挙句の果て、夜中に食事を摂るという夜型人間が急増しています。
その為に、翌朝になって起きるのが辛く、食事を摂るより少しでも寝ていたい、あるいは夜中の食事の為に胃が疲れ、食欲が起きないことから朝食が摂れないのです。
 朝食は、睡眠中に消費した栄養を補い、一日の活動の立ち上がりを支えるエネルギー源としての栄養を補給する重要な食事です。
しかし、朝食を充分に摂らないと、朝から疲労感が残り、日中のパワーが出ない、やる気が起きないなどの症状を訴え、体内の不足する栄養は恒常性維持機能により、付属器官に供給される分を減らし、生体機能に使われるようになります。その結果、徐々に毛髪にハリがなくなり細く痩せ衰え、異常脱毛も増えてきます。


B過激なダイエットへの戒め
太る原因は多く、数え挙げれば切りがありませんが、主な原因として、摂取した栄養のカロリー分を消耗する運動量が少なく、現代の食生活の特徴である、高カロリー食の割には、その代謝を助ける栄養が不足しています。更に現代人は冷え、低体温体質の人が多く、酵素の働きが低下している為に、エネルギー代謝に関わるインスリンの分泌に異常をきたし、ブドウ糖を燃焼する代謝機能が低下し、その分は皮下脂肪として蓄えられ、又、その皮下脂肪をエネルギーに代える機能も低下することから肥満に陥ります。
このような原因、要因があるのにも関わらず、いきおいダイエットをするということは、敵の習性を知らずして戦いに挑む、恰も従来の発毛、育毛法と同じで、決して良好な結果が出ないばかりか、多くの弊害を生み、特に毛髪の生成には大きなマイナス要因となります。
ダイエットをする人は、食事の摂取量を大幅に減らすか、朝食を摂らない人が多く、毛髪の生成におけるエネルギー源不足に陥り、蛋白質、ミネラルの不足は毛髪の原料が欠如し、ビタミンの不足は代謝機能や生理機能がスムーズに行かなくなり、特に糖質の不足は脳の栄養欠如になります。
空腹時やダイエット中にイライラするのは糖質の不足からくるもので、いたずらにアドレナリン系のホルモンの分泌を促し、交感神経を刺激し、アドレナリン作用を誘発します。
その結果、毛乳頭機能を低下させ、毛母細胞の核分裂が弱まり、異常脱毛、薄毛、円形脱毛、全頭脱毛を誘発します。
ましてや、長期間絶食を続けるということは言語同断、絶対に避けなければなりません。その為にのっぺらぼうになる程に髪の毛が抜け落ちるばかりでなく命まで落としているという現実を理解し、ダイエットをする以前に肥満の根本になる原因を改善すべきです。


C運動不足を解消する
運動をすると呼吸が荒くなり、心臓の鼓動が早くなり、体が温まり、発汗してきます。
体を動かすことによって、骨格に付属する筋肉が動き、熱エネルギーが発生し、そのエネルギー源となる酸素、水、栄養を運ぶ為に血液の流動性が高まり、必然的に血行が促進された証しですが、さりとて一気に全身運動をすると心臓に負担がかかるばかりでなく、活性酸素の発生によって逆に健康を損ねることになります。従って、このような弊害を持たず、効率よく血行を促進させる運動法として、手や足などの末端の組織を動かす運動が適します。
末端の組織を動かす運動として、理・美容学校の実習で行う手先の予備運動、発毛ドックにおける頭部のストレッチ体操などがありますが、最も大きな効果があるのは足を使った運動です。
足は、第2の心臓とも言われ、「経穴」の集合体になっているほか、人間の持つ自己相似性から、足は体全体を縮図にしたような反射枢になっていて、内臓や器官の異常を反射枢に現し、指圧やマッサージを施すことにより、体機能の改善と生理機能の回復が図れます。
更に、足を使った運動をすると、体重で末梢血管を押しつぶす事になり、その結果、細動脈→毛細血管→細胞組織→毛細血管→細静脈の末梢血流ルートの浸透圧が増し、血液の循環が正常に戻されます。
競歩運動をしたり、足を使った運動をしただけでも体が温まり、額から汗が出てくるのは、血液の温度が正常に戻ってきた事の証しです。


「気」の養生法 こうすれば成功する環境対策
(1)磁気と波動水
 近年、話題になっているものに、波動水と称される磁気処理水があります。水に対して強力な磁力線を加えたり、水道管を強力な磁石で包み、磁性化した分子を含む水を体内に入れる事で、健康を促進させるというものです。
 又、血液に磁力線を当て健康を促進するというものもあります。これらは、それなりに一時的に生体が活性化する事も考えられない事は無いのですが、もし、仮に血液中にニッケル、コバルトのような永久磁石になる物質が存在していた場合、これらがS S、N N、のように反発する極性が配列されていれば問題は無いのですが、これがN S、S Nのように吸着し合う配列になったときは、一個の結合した磁性体に変化し、血流を阻害します。クリームなど、皮膚の上から塗るものに含まれる場合はその影響は少ないと思われますが、水に含まれ体内に入ると、その影響は大きく、毛乳頭など末梢部における毛細血管などは簡単に血行障害を起こします。従って、安全性が確認できるまでは「発毛ドック」における発毛、育毛に関しての利用は禁止しています。
 強弱はありますが、波動水は磁気力を応用しなくても、容器に水を入れて掻き回すとか、水道の水を強くして容器に注げば簡単に波動水に変化します。
 要は水を動かし、水の分子に振動を与えスピン運動を起こさせれば波動水に変化するのであって、谷川の水流のように落差があって、水流が落下しただけでも波動が得られ、更に岩に当り、石に当り、コケに当り、強力な波動力を持ちます。従って、複雑な流水経路を持つ「真水」が最も人間の恒常性を保つ水として推薦できるのです。


(2)電磁波被爆から逃れるために
電気の流れを遮断する場合は、絶縁物質や絶縁体というものがあり、これらを使用することで確実に遮断する事ができますが、電磁波は電界と磁界の合成されたものですから、簡単に遮断すると言う事はできません。
電子レンジは、遮蔽の目的で金属製の扉を使っていますが、実際に遮蔽できるのは電界の部分で、しかも筐体に接地をしなければその目的はかなり低減します。
問題となるのは電磁波の変動磁界の部分で、軽減する物質はあるものの、大なり小なりほとんどの物体を貫通してしまうという性質です.
多くの電磁遮蔽グッズも発売されているようですが、やむを得ない場合を除き、発生源そのものへの対策と、発生源の実状に合わせた生活する側の対策を提案します.

1.電磁波の発生源から頭皮を離す
2.電磁波の発生エネルギーを弱くして使用する(被爆点において1ミリガウス以下、通電電流は0.15ミリアンペア以下)
3.使用時間、被曝時間をできる限り短くする
4.使用しない電気製品はその都度電源プラグをコンセントから抜いておく
5.同じ用途のものであれば電磁波発生の少ないもの又は発生しないものに代える
6.漏れ電磁波を防ぐ


(3)衣類は体内と頭皮の生理機能の恒常性を保つ為にある
 環境に対する養生を考えたとき、風土や気候を変えるという事はできません。住いにしても改築や改造程度のものならできるでしょうが、これでも大金がかかります。従って、これらのマイナス要因からいかに回避するかいかに身体を保護すれば良いかを見つけ出すことです。
 それには身に付ける衣類を考えれば手っ取り早い策になりますが、以外と知られていないのが衣類の選定と装着法で、その基本となる頭寒足熱の原理、健康の為に着用すると言う最も大切な事が理解されていないようです。
 人体の恒常性を保つには体温が大切な要素になるという事は何度も述べていますが、足だから下半身だからという理由で安易に扱われ又、何も考えず知らず知らずのうちに軽視されています。しかし、天頂部から足のつま先まで一部角質化した部分を除きあらゆる細胞の恒常性を保つ基本は全く同じです。
 腋の下だから36.5℃の体温が必要で足とか頭は20℃でも30℃でも良いということはなく、人間の体は常にその部分の恒常温度が必要で外皮はすべて36℃の体温が必要になります。
 その為にはいかに血行を良くするか、いかに温めるか、いかに保温するかが必要な条件となり衣類は「保温」という大切な役目を持って着用するのです。
 現に、下半身を薄着し靴下も履かなかった人が、もも引きを着用し靴下を重ね履きしただけで発毛が促進された例がたくさんあります。そんなバカなと思う人は実行してみてはいかがでしょうか。発毛が促進される他に体調が良くなり、水虫が治り足の臭みもなくなってきます。

@素材
当地は結城つむぎの産地ですが、つむぎとは絹織物のひとつで、保温力に優れ汗を吸い取り外界へ発散するという特長があります。あたかも衣類が呼吸するかのような素材で、冬は暖かく夏は涼しく、一年中着られる事から普段着として全国にその名を轟かせてきたのですが、純日本風の建物と同様織り子と言われる職人が激減し、高価な為、伝統工芸品として残っている程度でその名も消え去ろうとする運命にあります。
つむぎの様な天然素材に取って変わって出現したのが、製糸原価の安いナイロン、アクリル等の化学合成繊維です。
綿、絹の素材に近づけようと保温力、汗の吸着力等に工夫して、多くの種類の素材が出現し繊維の織り方にも工夫をして努力をしていますが、所詮原料は石油ですから、皮膚の表面を冷やしたり素材によるカブレを起こしたり皮膚炎を起こす人もいます。
最近は化学合成繊維の下着を着用する人は減ってきていますが、それでもストッキング、パンティストッキング、靴下等を着用する人は多くその素材の為に冷えを起こしています。
 

A保温を目的とする着衣の比率
衣類を着用する場合は、上半身、下半身共に同じ条件、もしくは下半身に厚着、上半身を薄着にして身体の温度は平均になるように保温する事が基本で、特に脱毛症に患っている人は、上半身に一枚着用したとすれば下半身は二枚、靴下は三枚という比率が理想です。
冬期における女性の着用例として、上に毛皮のコート、エリ巻を着用し、下はスカートとストッキング、男性においては上に背広を着て、その上にコートやオーバーを着用し、下はズボン一枚、もも引きは履かず、靴下は一枚といういでだちで、しかも寒い寒いを連発しているのを見かけますが、この着用比率は理想と全く逆で、冷えて当たり前なのです。
冷えや低体温を改善し発毛を促すのは、足元の保温から始まるのですが、足元の保温を充分に行なわなければ上半身をいくら重ね着をしても、体温の下降を防ぐ事はできません。

B下着
汗をかきやすい部分は、頭皮の浅頭部、額、顔面、エリ元、胸元のゾーン、腋の下、鼠頚部、性器、特に男性は陰嚢、膝の裏側、足、特に指と指の間などが挙げられますが、下着はこれらの汗を吸い取るという目的を持って着用します。従って、綿の下着が理想とされ着用している人は多いのではないでしょうか。しかし、汗が付着したら取り替えるという事をその都度行なえば良いのですが、そのままにして置くと汗が蒸発する時の気化熱によって体温が低下するという欠点もあります。
この欠点を補なう方法として薄手なもので良いのですから絹の下着を付け、その上に綿を着用するとこの欠点が解消されます。
先に述べたように、絹は保温力に優れしかも吸い取った汗は綿の方に吸収され皮膚の温度が低下しないで済むのです。

C衣類による体の締めつけは脱毛を促進する
衣類の重ね着、重ねばきは、その厚みから体を締めつけるという欠点が生じます。従って上に着用する衣類は、大きめのサイズを選定し、ゆったりと着用する事が大切であり、特に足、首、手首を締めつけるのは血流が阻害され、せっかくの保温の目的も低下します。
絶対に首廻りの小さいYシャツは避ける事、少なくとも指が三本入るくらいの余裕を持った首廻りのサイズを選び、ネクタイも結び目だけ固くして締め付けをしないことです。
同様に、女性の体型矯正下着も充分な選定が必要です。着用した為に、便秘、頭痛、動悸息切れ、下半身のしびれを起こすようなものは長期間着用するときと毛髪の生成を阻害する場合もありますから、選定の際は充分な注意が必要です。
D靴下
足における発汗は運動した時などに生じる熱を放散させる為の汗と、冷えて足の温度が低下した時に熱細胞によって過剰に上昇した温度を下げる為に出る汗があり、特に後者の場合は足の裏と指の股の部分に多く発汗し最も残留し易い条件下にある為に、その汗が冷えを起こす元凶となり、そこに雑菌や糸状菌が付着すると独特の異臭を発したり水虫になったりするのです。
これらのマイナス要因を取り除くには五本指付きの靴下が理想的です。下着と同様に下に絹を履きその上に綿を履くと良いのですが、このままでは他人様が見ると笑いの種になり、エチケット上も良くありませんからファッション性のある靴下を履くと良いでしょう。又、冬期はヒザ上までのロングソックスを履くと更に効果的です。足は特に汗をかく部分ですから朝履いたらそれで一日中というのは良くありません。試しに半日も履いた靴下を手で触ってみて下さい。大抵、湿っているか、ビショッとした感触に驚きます。この汗によって冷やされるのですから、益々足の温度は低下します。その為に冷やされた血液が内臓に向かって戻されて行く事を考えると、恐怖感さえ覚えます。
この事を理解して靴下は朝、昼、夕方というように履き換えをする事、そしてゆったりサイズを選ぶ事が必要で、特に足首が締めつけられるようなタイプのものは避けるべきです。 
直接衣類とは関係ありませんが、靴についても一言付け加えておきます。
軽く、足の皮膚呼吸を妨げないという点ではカンガルーの革靴が良いのですが、どの靴を選ぶにしてもつま先を締めつけない先幅が広く、甲も締めつけないタイプ、簡単に言えば甲高幅広が良く靴下の重ね履きを考慮すると4Eもしくはそれ以上の幅にゆとりのあるものを選ぶべきです。


(4)発毛を促進させる栄養
@毛髪と栄養
 発毛の講義の際、「毛髪の生成成長を促すにはどのような栄養を摂れば良いのでしょう」かという質問をする事があります。
 「解らない」「あまり関係ない」「毎日の栄養から摂っているだけで充分」と認識の低さが伺える答えが返ってきますが、大変驚いた答えに毛髪の成分表にある「蛋白質とイオウ」と答えた人が多くありました。この答えは絶対的な間違いとは言えませんが、実はこの考え方には大変な誤解があり、発毛育毛が成功しない原因でもあるのです。
 牛を思い出して下さい。草や穀物しか食べてないのに全身に毛が生え角が生え、しかも人間に牛乳や肉まで提供してくれます。これは摂取した栄養を物質代謝して得た結果なのです。当然、人体も毛髪も同じ物質代謝の結果生まれたもので,毛髪を分析した結果の成分を云々するということは、発毛育毛という目的からすれば決して的を得た答えではありません。
 一方、発毛ドックに訪れる人達に食事は何の目的で摂っていますかという質問に対して、最も多かった答えは食欲を満たすが90%、習慣的にが8%、栄養を摂る為にが何と2%しかなかったのです。
 このアンケートからも解かる事は、脱毛、薄毛に悩む人達は栄養の事は考えず自分の好みで空っ腹を満たしているという事になります。しかも、大半の人は加工食品やインスタント食品を常食し自ら脱毛促進食品を選択していた事も判明しました。
 そして、これらの中には巷に氾濫する情報に振り回され、栄養に対して偏見を持っている事も解かりました。
 一例を挙げれば、あるテレビ番組で豚肉にビタミン・B1が豊富に含まれているという事を知った時から毎日豚肉を食べているという方がいました。しかも水溶性ビタミンだから毎日摂らなければダメなのですと主張し譲りません。
 果してこれで良いのでしょうか、答えは「ノー」です。
 腸内にはビヒズス菌や乳酸菌などの善玉菌と大腸菌やウェルネッシュ菌などの悪玉菌が常在していますが、ビヒズス菌は腸内でビタミン・B1を合成して人間に与えてくれる他、ビヒズス菌の持つエキス成分は発毛促進作用があります。しかし、毎日のように動物性の蛋白質を摂り続けていると悪玉菌が増え、ビヒズス菌の働きが弱まるばかりではなく、大腸菌やウェルネッシュ菌からビタミン・B1破壊酵素が放出され逆にビタミン・B1が壊れてしまうのです。
 このように一方的な情報や誤った情報が氾濫しているご時世では、髪の毛に悩む人達はどのような食べ物を摂れば良いのでしょうか。

 ここでもう一度、人体に対する栄養の働きを簡単にお浚いしてみましょう。
 糖質、脂質、蛋白質の一部は生体を維持し、毛髪の生成・生長を促すエネルギー源として働き、蛋白質とミネラルは生体及び毛髪の構成物質として、ビタミンとミネラルの一部は糖質、脂質、蛋白質の代謝を補助し、円滑にして毛髪の質を生み出します。
 更に、毛髪の健全な生成成長を側面から支え体内の正常な機能を円滑にする機能性成分、心と脳・神経の働きを正常に保つ栄養群、環境の悪化や化学物質汚染から生体と毛髪を守る栄養群等々、毛髪が生成生長してゆく上においては多くの栄養素が必要なのです。
 この項では、私が約30年の歳月をかけてこれらの問題に取り組み、実際にサプリメントをつくり発毛ドックで実践してきた結果、最低限この程度の栄養が必要であるという結論に立ち、それぞれの食物が毛髪の生成生長に対してどのように働くのかについて述べます。


A毛髪の生成、生長を補助する食べ物
 これから紹介する食品は発毛、育毛の成果が一般と飛躍し、しかも食べ物ですから副作用やリバウンドがなく、安全にその効果を得る事ができます。言い換えれば、「発毛促進食品」「発毛促進生薬」として推薦できるものばかりで、漢方で言うところの「医食同源」に値するものです。
 日本人は古来、アワ、ヒエ、米、麦を主とした繊維質の多いものを食べてきた関係上、 欧米人に比べると腸が長いとされています。これは長い歴史の食習慣が体の機能性を変 え、対応してきた結果、そうなったものです。
 又、「食は百年」という言葉もありますが、人間には長い間の食習慣によって消化、吸収、そして吸収されてからの機能性も変えてゆくという順応性があります。
 発毛、育毛、そして健康を促進させるとするならば、化学調味料で食感を良くした食品を止め、日本人本来の主食である「玄米食」や「麦飯」に変え、加えて「おふくろの味」を摂るべきです。

◎玄米
米のもみから穀を取ったものが玄米で、精米の度合いにより、「三分づき」「五分づき」「七分づき」「白米」「上白米」といい、精米した分胚芽の量が減り、胚芽は「米ヌカ」として、ヌカ漬けの材料や魚つりの撤き餌、有機栽培の肥料などに利用されますが、米の栄養として重要な部分はこの胚芽にあるのです。
単に見た目が悪い、口当たりが悪いという理由で、大切な栄養を魚の餌や野菜の肥料にしてしまうのは実に勿体無い事で、これを人間様が摂らないのは不合理以外なにものでもありません。
玄米には糖質、蛋白質を主として脂質が含まれ、毛髪を強く逞しく生成させる為のエネルギー源として、又毛質の原料となる蛋白質を多く含み、特に胚芽には精神のビタミン、ビタミン・B群が豊富に含まれ、食物繊維、髪にツヤと腰とハリを与えるセレニウム、貧血対策の鉄、毛髪の原料となるリンなども含まれ、発毛、育毛の主食としては最適ですが、やはり食感の悪さに関しては歪めない部分がありますから、「玄米ガユ」にしたり、あるいは圧力鍋や圧力釜で炊くと良いでしょう。

◎そば
米、麦類で摂れない栄養を補う意味で時々、そばを主食代わりにすることが必要です。
そばには、糖質、蛋白質、脂質、食物繊維、ビタミン・B群の他に鉄を多く含み、毛細血管の血行を良くするビタミン・Pの一種であるルチンを含み、更にリヂン、トリプトファン、スレオニンなど米や麦類に含まれていない必須アミノ酸を摂ることができます。できれば水溶性ビタミンであるルチンを摂る為にも、「そば湯」を添えれば合理的です。
但し、あまり食べ過ぎると胃腸を冷やす原因となりますから、ほどほどにしできればつけ汁で食べる時は「もり」より温かい汁で食べる「かけ」の方が良いでしょう。
もりで食べる時は、ダイコンをそばの太さに合わせて縦に切り、そばと一緒にゆでたものを食べると良いでしょう。そばは食べると言うより、すするという感覚で食べる為にどうしても咀嚼不足から消化不良を起しやすくなります。ダイコンの消化酵素、主としてジアスターゼが消化を助けます。そば通にはあまり喜べないと思いますが、慣れるとさっぱりとした食感が病みつきになります。

◎しもつかれ
発祥地は栃木県阿蘇郡葛生町との事ですが、栃木県南部、茨城県西北部の一部にしか伝承されていない貴重な存在で、当地では「すみつかれ」という名称で呼ばれ、毎年2月の節分が終わると、各家庭で作る恒例の料理になっていますが、これが実に毛髪の生成、成長に適した料理で、漢方の料理を薬膳と表現するならば、「しもつかれ」は「毛髪生成精進料理」とも呼べる絶品です。 

料理方法を簡単に説明すると、まず大根、人参を鬼おろしと称する目の粗いおろし器ですりおろし、そこに細かく切った油揚げ、ぶつ切りにした鮭の頭、煎った大豆、酒粕を入れ煮込みます。
まず主役の大根ですが、「しもつかれ」に入っている具の消化を助けます。人参は、ビタミン・Aの宝庫と呼べるにふさわしく、カロチンを多く含み、毛細血管の血行を正常に保ち、皮膚や毛母細胞を活性化し、毛髪の発育を促進させ、頭皮の硬化を防止し、更に鉄との相互作用により貧血を防止して、貧血に起因する細毛や薄毛を改善します。そして人参の知られざる効用として、体を温め、冷えを改善する働きがあります。豆は良質な蛋白を含み、毛髪の原料となり、ビタミン・Aの吸収を向上させます。毛髪を正常に生成、成長させる為に存在すると言っても過言でない優れた食材です。豆に勝るとも劣らないのが鮭の頭で、蛋白質、脂質、ビタミンA、B1、B2、ナイアシン、D、E、カルシウムなどがバランス良く含まれ、ビタミン・Dの作用でカルシウムの吸収が良く、カルシウム不足による現代の神経的な脱毛には最適の食材で、特に目の回りにはゼラチン質と機能性成分の一種であるDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が含まれ、ゼラチン質はコラーゲンの一種で真皮層の基質となり、DHA、EPAは必須脂肪酸の一種で、毛細血管の血行を良くし、毛母細胞を活性化します。酒粕は、発酵させた米から酒粕を取り除いた残り物で、糖質を多く含み、エネルギー源に、他に蛋白質、ビタミン・B2、Eが含まれ、油揚げには豆の成分の他にリノール酸を多く含み、人参に含まれるビタミン・Aの吸収を助けます。この中で不足する成分はビタミン・Cですが、大根の葉をお新香として添えるとか、この時期豊富なミカンを食べれば完璧な「毛髪生成精進料理」となります。

◎大豆を使った献立
大豆は煮豆やきな粉にして、又、味噌や豆腐、納豆、湯葉などの加工食として、近年は手軽に大豆の栄養が摂れるとして豆乳が、あるいはビタミンCが豊富ということで大豆もやしを食べる人が増えてきましたが、脱毛や薄毛に悩む人達は、豆腐や納豆はおろか、みそ汁でさえも口にしない人達が多いのには驚きです。
大豆は毛髪の生成に不可欠な必須アミノ酸をバランス良く含み、脂質、ビタミン・B群、ビタミン・E、食物繊維、レシチン、リノール酸、イソフラボン、オリゴ糖、サポニン等も多く含まれ、正に「畑の牛肉」と呼ばれるにふさわしい栄養価を持っています。更に大豆に多く含まれるイソフラボンには、女性ホルモン(エストロゲン)と同様の作用を持つ物質(アストロゲン)が含まれ、5αリダクターゼの阻害効果があり、男性ホルモン(テストステロン)と5αリダクターゼの結合による2HD、ディヒドロテストステロンによる脱毛を阻止する効果があります。又、サポニンには活性酸素を抑制し、過酸化脂質を押さえる働きがあり、頭皮の老化を防止し、オリゴ糖はビヒズス菌の栄養にもなります。
大豆は、これだけでも優れた毛髪生成食材ですが、組み合わせる事により更に、発毛、育毛効果をもたらす食材は海藻類で、コンブ、ひじき、ワカメなどがありますが、その中で「豆コンブ」という名称で親しまれている、大豆とコンブの煮物がお勧めです。
昔から、髪に海藻が良いとされていますが、コンブにはヨードとカルシウムが多く含まれ、他にコンドロイチン、フコダイン、鉄、リン、カロチン、ビタミンA、蛋白質、食物繊維をバランス良く含んでいます。
毛髪の成分はリンを含む蛋白質からなり、コンブの成分は毛髪の原料の一部となり、又、ヨードにはチロキシンが多く含まれ、チロキシンは甲状腺から分泌される成長ホルモンの原料になります。
更に毛髪に艶と腰を与える働きは、海藻独特のヌメリ分を作っているコンドロイチンにあり、毛髪を生成、成長させる上で単品の食材としては、群を抜いています。
他に鉄は貧血を改善し、細毛、薄毛を力強い毛髪にする働きもあります。

◎味噌汁
   味噌汁に使われる味噌は、一般には大豆味噌と呼ばれ、蒸した大豆に米こうじを入れ発酵させ、そこに水と塩を加えたもので、良質なアミノ酸を始め、脂質、ビタミン・B1、B2、鉄、リン、カルシウム、ナトリウム、カリウムなどが含まれ、これだけで「発毛スープ」と表現したい程、毛髪の生成、生長に有効な調味料です。
  更に、大豆が発酵する時に乳酸菌が作られる為に、味噌汁に一緒に入れた具の消化吸収を助け、善玉菌の働きを活性化し、大腸の働きも向上します。塩分を気にする人は具にカリウムを多く含む緑黄食野菜やいも類を添えると良いでしょう。
  更に海藻類や野菜、小魚、貝類、山菜類などをたっぷり入れる事によって、日本人に合った理想的な「発毛スープ」を作る事が出来ます。

◎味噌汁の具として最適なしじみ
昔から肝機能の改善、貧血の改善、利尿促進に効果があるとして、どこの家庭でも川に行って取ってきては食べていた記憶があります。
しじみは、擬態性を持っていて、川藻のたくさん生えている清流のしじみは青みがかり、河口付近や潮の差す河川のしじみは黒くなっていますが、いずれも殻がふっくらと丸みがあり、大粒のものがおいしく、青みがかかっている方が汚染の少ない川で採れたもので、最上品と言えます。
しじみにはタウリンやアルギニン等の、良質な蛋白質とビタミン・B2、B12、カルシウム、鉄、リンを多く含み、ビタミン・B12と鉄は貧血による細毛、薄毛を防止し、蛋白質とリンは毛髪の原料になり、ビタミン・B12とタウリンには肝機能を向上させる働きもあります。
しじみは川、海を問わず貝類の仲間では最も毛髪の生成、成育に効力があり、発毛を目的とした味噌汁の具として是非摂って頂きたい食材です。

◎ゴマを使った献立
成分の半分以上は脂質で、その大半はリノール酸からなり、大豆に勝る良質なアミノ酸、ビタミン・B1、B2、E、鉄、カルシウムを多く含み、特にフラボン配糖体、ヒスチジン、グリシン、ネブロリン、イソロイシン、トリプトファン、ビタミン・B群の働きで、肝機能を強化し、エネルギー代謝をスムーズにする他に、血液を浄化して末梢血行を促進し、毛細細胞を活性化します。
リノール酸は副腎皮質ホルモンの分泌を盛んにし、抗ストレス作用を発揮し、カルシウムとビタミン・B群はイライラを鎮め、神経性の脱毛を防止し、又貧血を改善する作用もあり、貧血に起因する細毛、薄毛を防止します。更にリノール酸とビタミン・Eの働きで、血行を改善し、血管の老化を防ぎ、黒く艶のある毛髪を保ち、更に老化が一因となる退化型脱毛も予防します。
このように毛髪の生成、生長に有効な働きを持つゴマですが、大きな欠点があります。それは皮を取らないと、そのまま便と共に排泄され、栄養として役に立たなくなります。
従って、すり鉢などですり潰し、みそ汁に加えたり、茹でた野菜にふりかけて食べると良いでしょう。更にすり潰したゴマは長時間放置し、空気に触れると酸化してしまうので、味噌などに混ぜ、ごまあえなどにして食べたり、冷麦や素麺のつけ汁にすると、さっぱりとした食物に偏りがちな夏期の栄養不足を補えます。

◎ネギを使った献立
昔から冷え症を改善する野菜として、ネギ、ニンニク、タマネギ、ラッキョウ、ニンジン、ゴボウ、大根、レンコンなどの根物野菜が良いとされていますが、その筆頭に挙げられるのがネギです。
ネギにはビタミン・A(青い部分に含まれる)、C、カルシウム、カリウム、アリインなどが多く含まれ、これらの相乗作用によって冷え症を改善する効果が得られ、脱毛症に関しては、「ぬた」や「ネギ味噌」が最適です。味噌の持つ毛髪生成、成長促進機能と、ネギの冷え改善効果、ネギに含まれるビタミン・C、カルシウムによる精神安定効果が過労による脱毛、精神的な脱毛、冷えによる脱毛、頭皮の炎症による脱毛を改善します。

◎背の青い魚を使った献立
毛髪の生成に良い魚と言うと、引き合いに出されるのが背の青い魚、例えばサバ、サンマ、アジ、キビナゴ、イワシで、昔からコンブと並び称賛されてきました。
これらの魚に共通して言える事は、EPA(エイコサペンタエン酸)と蛋白質、脂質が多く含まれ、次いでビタミン・B2も含まれているという点です。EPAは血管内のコレステロールを除去し、毛細血管の血行を促進して、毛母細胞を活発にする働きがあります。又、ビタミン・B2はアミノ酸、糖質、脂質の代謝を助け、毛母細胞の再生を促し、副腎皮質機能を高め、毛髪の成長を促進する働きがありますが、現代の若者達でこれらの魚を食べる人が非常に減っています。特に皮に含まれるビタミン・B2は、ことさら摂取のチャンスを逃しています。
これらの魚の中で、特にお勧めがイワシで、弱火でしっかり焼けば頭から尻尾まで残すところなく食べられる点でカルシウムやリン、ビタミン・Dも多く摂れます。もし、それがどうしてもいやだというのであれば、缶詰かしらす干し、あるいはつみれが良いでしょう。缶詰はイワシが丸ごと入っています。しらす干しはイワシの稚魚を捕獲したものを釜茹でし、天日に干したもので、いずれもイワシと栄養には大差はありません。

◎シイタケを使った献立
シイタケにはビタミン・B1、B2、B12、D、D2を始め、エリタデニン、レシチンを含み、ビタミン・Dはカルシウムの吸収を補助し、神経系の脱毛を防止する働きがあり、エリタデニンは血液の代謝を促進する作用があります。ビタミン・Dは紫外線で合成されることから、電気乾燥シイタケ、生シイタケより太陽で乾燥したものの方が栄養、風味共に良くなります。
乾燥シイタケのもどし水(エキス)は血液浄化、血圧降下に著明な効果を持ち、その効果は実証済みです。
シイタケはこのように薬効ばかりではなく、料理の旨味を出す効果もあります。そばやうどんの汁のダシに、炊き込み御飯の具に、精進料理の具にと幅広く利用され食べられていますが、野菜炒めの具として食べるのが最もポピュラーではないでしょうか。特に、脂溶性のビタミンを含有するニンジンやパセリ、レバー類などと一緒に炒めると吸収が良くなります。
この場合に使用する油は、植物性が良く、サフラワーオイルと呼ばれる紅花油がお勧めです。
紅花油は、紅花から抽出した植物性の油で、ビタミン・Eを多く含み、必須脂肪酸としてアラキドン酸、リノレイン酸、リノール酸が含まれ、リノール酸は血液中のコレステロールを減らす働きがあり、動脈硬化、高血圧を改善する効果もあります。
ビタミン・Eは、ビタミン・Aやカロチン、必須脂肪酸の吸収を助け、細胞の過酸化を防止し、細胞の機能と代謝を補助する働きもあります。天ぷらなどの揚げ物やドレッシングオイルにも使って頂きたい逸品です。
おふくろの味と呼ばれる料理は、他に多くあります。例えば鍋物、けんちん汁、のっぺ汁、油揚げとひじきや豆などの煮付け、大根の煮付け、酢の物、精進揚げ等々...数挙げればきりがありません。要は味噌、しょう油、塩、酢などの調味料を使った昔からある料理と思えば、間違いありません。詳細はいずれの機会にご紹介します。

◎納豆
納豆は原料を大豆とした発酵生成食品ですが、大豆そのものの栄養素の他に納豆菌の働きにより強化、合成される栄養素、薬効成分があり、その中には毛髪の生成、成長を補助する成分が多く含まれています。
大豆としての成分、必須アミノ酸、脂質、ビタミン・B群、ビタミン・E,食物繊維、レシチン、リノール酸などに加えて、納豆菌の作用で毛母細胞の働きを活性化するビタミンB2が強化され、アミラーゼ、プロテアーゼという酵素が消化酵素の働きを助け、消化力も高まります。又、ナットウキナ−ゼには血栓を防止したり、SOD作用を高める働きもあります。更にパントテン酸には糖質と脂肪のエネルギー代謝を助け、毛乳頭に活力を与える働きがあります。
納豆独得のネバリの成分は、フラクタンという多糖類とグルタミン酸からなり、フラクタンは消化酵素によりブドウ糖に変化し、グルタミン酸はアミノ酸となり、活力のある毛髪を生成する源となります。
納豆は生菌発酵食品ですから、腸内の乳酸菌などの善玉菌を増やし、腐敗菌や病原菌の発育を阻止する力があります。

◎鶏卵
牛乳と並び、豊富な栄養を含むことから、完全食品とも呼ばれ、毛髪の生成、成長に欠かせない食材です。
卵には毛髪の原料となるアミノ酸、蛋白質、リンを多く含み、卵黄には吸収の良いレシチン、ビタミン・A、B1、B2、リン、鉄を含み、特にレシチンはスッポン以上の吸収率があるとされ、昔から卵を丸ごと酢につけて作る酢卵、殻を炒って作る黒焼き、卵黄から抽出する卵油は昔から生薬として疲労回復、胃腸機能の活性化、血圧降下、血中コレステロール除去、白髪改善などに食用されてきました。
卵はコレステロールが心配で食べませんという人がいますが、これは間違いで、卵そのものに含まれているコレステロールは確かに多いのですが、卵黄に含まれるレシチンに脂肪を乳化して血管壁に付着するのを阻止する働きがある為に血中コレステロールが増えるという心配には及びません。

◎ニンニク
ニンニクは、昔からスッポンと並び強精、強壮食品として常食されています。
ビタミン・B1を始め、B2、C、ミネラル分としてカルシウム、リン、鉄、ゲルマニウム等を多く含んでいます。ニンニクには独得の辛味と刺激臭があり、この成分は「アリイン」という物質ですが、ビタミン・B1と結合すると吸収の良い「アリチアミン」に変化し、辛味や刺激臭も減少し、有効成分の働きを弱めるという事もなくなります。この状態を無臭ニンニク(サチバミン複合体)といい、単体のビタミン・B1の数十倍の吸収力を持ち、腸内悪玉菌の発するビタミンB1分解酵素の影響を受けることがなく、確実にその効果を発揮し、疲労回復、ストレスや神経の酷使による脳、神経の疲労回復には非常に効果があり、これらに起因する薄毛や円形脱毛、全頭脱毛を改善します。
「ゲルマニウム」は、造血作用と貧血改善作用がある事で知られていますが、体内の酸素量を増やし、抹消まで運ぶ働きもあり、弱った毛母細胞に酸素を送りこみ、エネルギーを生む力を与えます。又、「スコルジン」は新陳代謝を高め、体を温める作用があることから、冷えに起因する脱毛を改善します。


◎レバー
昔から、貧血にはレバーが良いとされ、妊娠時や授乳時には欠かせない食材として知られてきました。レバーにはビタミン・C、B12、M、鉄などが含まれ、これらの成分がそれぞれの作用を持ち、貧血を改善するのですが、貧血に起因する脱毛、薄毛、細毛にも効力を発揮します。
その他、ビタミン・A、B1、B6、良質なアミノ酸を含む蛋白質を含み、肝機能を向上させ、体内老廃物、体内毒素による頭皮の炎症や毛乳頭機能低下による脱毛を防止します。レバーには豚レバー、牛レバー、鶏レバーなどがありますが、基本的な栄養は同じでも豚レバーが最も多くの栄養素がバランス良く含まれる点で優れています。


◎緑茶
近年の食生活の変化は飲料水の好みまで変え、缶やペットボトルに入ったジュース、炭酸飲料水、スポーツドリンク等を飲む若者が増えています。
内容を調べると、化学合成成分が多く混入され、これらの飲料水を飲まなくなっただけでも脱毛は防げるのですが、それに加え、日本古来からある「緑茶」を飲む人が激減しています。緑茶には、ビタミン・Cが最も多く含まれ、鉄、カフェイン、テニアン、タンニン、カロチン、キサントフィ―ル、フラボノイド、ルチン、クロロフィルなどが含まれています。
先に述べたように、ビタミン・Cは毛髪の生成、生長には必須のビタミンで、神経性の脱毛、頭皮硬化による脱毛、若年性の脱毛には特に有効で、又過剰喫煙に起因する脱毛にも効果があり、又、鉄の吸収を助ける事から、貧血対策にもなり、貧血による細毛、薄毛にも効果があり、緑茶に含まれるビタミン・Cは、例外的に熱に強い性質を持ってます。

◎ハチミツ
蜜蜂が採集した花蜜と、蜜蜂の体内酸素によって「ブドウ糖」と「果糖」に分解し、花粉とローヤルゼリーを混ぜ、更に水分を蒸発させて作り上げたものがハチミツで、クレオパトラも美肌を求めて愛用したことで知られています。
ハチミツの主成分である「ブドウ糖」と「果糖」は、既に単糖類に分解されている為、体内に入ると直ちに吸収され、即効のエネルギー源となります。
砂糖のように、体内のカルシウムを奪わずに吸収されるので、成長期の子供やスポーツマン、神経的な要因を持つ脱毛症の人のエネルギー源補給に最適です。
ハチミツにはブドウ糖、果糖の他に乳糖、リンゴ酸、22種のアミノ酸、80種の酵素、酵母類、カリウム、カルシウムを始めとする27種のミネラル類、ビタミン類としてB1、B2、B6、C、K、葉酸、パントテン酸等を含み、正に栄養の宝庫とも言えます。

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