第3章 毛髪の生成、成長を阻害する原因、要因
脱毛を大別すると諸々の原因、要因によって毛周期が短くなる「一代退化型脱毛」、頭皮以外の体内、心と脳・神経、環境等々によって起こる「誘発型脱毛」、何らかの原因によって終止期が早められて健常毛が異常脱毛する「一過性脱毛」、外部からの引っ張る力が毛髪に加わり、毛包がゆるみ健常毛が離脱する「過張力性脱毛」、ケガやヤケド等が原因で毛包組織、毛乳頭が組織破壊されて起こる「瘢痕性脱毛」、更に正常な毛周期を終えた毛髪が抜け落ちる「自然脱毛」に分けられます。
「一代退化型脱毛」には、男性型脱毛症に見られる脂漏性脱毛、粃糠性脱毛、びまん性脱毛、老人性脱毛等がありますが、近年は女性でも男性型脱毛症の原因、要因による薄毛、禿毛が増えています。
「誘発型脱毛」には、円形脱毛、悪性脱毛、全頭脱毛、全身脱毛、神経性脱毛、電磁波症候群等々...現代の脱毛症の大半を占め、年齢、性別を問わず増え続けています。
これら2つのタイプの脱毛症は稀に一過性のものもありますが、一般的に根強く、長期に渡る対策が必要となる場合の方が多くなります。
「一過性脱毛」に関しては、原因が単純なものが多く、例えば産後脱毛や医薬品による副作用やリバウンドによるもの等がありますが、産後脱毛はホルモンの分泌が正常になれば自然治癒し、薬品による副作用の場合は薬品の使用を中止すれば自然治癒しますが、薬品を中止してから発生すると根治しにくいリバウンド性のものがあります。
「過張力性脱毛」には、常に片寄った方向に毛髪を引き詰めていたり、結髪されると起こる結髪性脱毛や無意識のうちに毛髪を引っ張っている為に起こるトリコチロマニア脱毛等がありますが、いずれも一過性のもので、毛包に過大な負荷を与えないようにすれば自然治癒します。
最後に大半が、発毛不全となってしまう瘢痕性脱毛ですが、近年は植毛の際、誤って毛包を損傷したり、皮膚の損傷部から雑菌が入り、周囲に存在する毛包に炎症を起こし、発毛不全になっている例もあります。
以上簡単に述べただけでもこれ程のタイプの脱毛があるわけですが、実際に薄毛、脱毛、禿を様々な角度から深く追求していくと、多くの問題点にぶつかり、解決する度に、次々と加えてきた結果、現在では500余りの原因、要因を発見しています。いかに発毛は奥が深く、且つ広範囲の研究が必要となるかお解りいただけたと思いますが、10年や20年の浅い研究ではとてもとても解らないことばかりで、34年目に「自然治癒力発毛理論」が確立し、40年を経てやっと毛髪の生成、生長を阻害する原因、要因の九分九厘が解決し、自信を持って発表するに至ったわけです。
本稿においてはこれらの原因、要因の総てをひとつひとつ詳細に解説しながら皆さんにご理解して頂こうと始めたのですが、この項だけを題材にしただけでも一冊の分厚い本が出版できる程の原稿量になってしまいます。詳細はいずれの機会にということで、最も多い原因、要因に的を絞って解説します。
(1)頭皮組織の機能障害
@禿と遺伝
昔から「禿は遺伝する」とされ、この事が一般的に定着してしまった今、皆さんはこの恐怖から逃れようと必死になっているのではないでしょうか。
実は、私もこの遺伝説には振り回され、苦しんできた一人ですが、時を経て見れば、実にバカバカしい説に振り回されていたものと苦笑しています。
今、こうして冷静になって周囲を見渡すと、「父親が禿げているのに息子は黒々とした毛髪を保っている」ここまでは一般的にある事です。しかし、円形や全頭脱毛を除いて、禿が遺伝という事であれば、父親、近親者に禿がいれば生まれつき禿がいても当然、それが青年層になってから禿げるとはどういう事なのか、という疑問が沸いてきます。
黒人を思い浮かべて下さい。両親が黒人であれば生まれつき縮毛のように男性、女性を問わず、しかも幼児期、青年期、壮年期という変化はないのです。
私は遺伝学者ではありませんから詳しい事は解りませんが、最も気にしていた部門ですから、このような疑問を基に、自然治癒力の見地から研究を重ねてきました。
これらの研究の結果、「禿そのものは遺伝ではない。禿げる体質、気質及び骨格等の組織構造が遺伝するものであり、その家系の生活習慣が影響される」従って、体質、気質を自然治癒力で変え、組織構造の欠点を理学的に改善し、生活習慣を本能に導く」という結論に達しました。
これが総て、これが正論とは申しませんが、少なからずや遺伝説に振り回され、苦しんでいる人達には、何がしかの「光」を思い出す事ができたのではないでしょうか。
A皮脂過多症
皮脂は、皮脂腺を組織する腺体の腺細胞が死んで分泌物化したもので、正確に言えば排泄物ということになりますが、体表の毛の生えている部分における総ての毛包に開口する皮脂腺から分泌されています。
原則として、手のひらや足の裏のように毛の生えていない部分には皮脂腺は存在しないのですが、口唇、外陰部、肛門周囲、女性の乳頭のように独立脂腺を持ち、皮脂を分泌している部分もあります。
頭皮、顔面には皮脂腺が多く分布し、特に頭皮は1cm2で400〜900個もあり、その分泌量は個人差もありますが、1日平均1〜2gとされ、その組成成分は遊離脂肪酸が約56%、エステル、グリセリド、ワックス、スクワレン、コレステロール等の中性脂肪は44%からなっています。
皮脂腺は、ホルモンや自律神経の影響を受け、その分泌量が大幅に増減しますが、正常に分泌されるか否か、又毛包内に沈着して毛髪の生成、生長に影響を及ぼすかは自然治癒力に大きく左右されます。
自然治癒力が活発に機能していれば、中、高校生の頭皮に見られるように皮脂が固形化して毛穴を詰めていても毛髪の生成、生長には影響はなく、最も問題となる毛包内あるいは毛球部に沈着する皮脂も排泄作用が正常に行なわれていれば、何の支障も起こりません。せいぜい起きたとしても、皮脂の為に毛髪が異常に脂ぎったり、重く感じる程度のことで、毛髪の生成、生長には何ら支障はないのです。
B皮脂やフケの異常発生による脱毛
1.乾性のフケを伴う脱毛
通称、粃糠性脱毛症とも言われ、前頭部から天頂部、時には全頭に及び、頭皮の角質異常が起こり、乾燥性の細かいフケが発生し、そのフケが毛穴から毛包を埋め尽くす為に、毛髪の成長が妨げられ、毛髪が細くなってきます。
初期の症状としては痒みはなく、細かいフケの発生を見る程度で、進行すると徐々に痒みが強くなり、洗髪した後、頭皮が赤みを帯びてきます。
スコープで見ると毛幹の根元を取り囲むように、毛穴の開口部からフケが盛り上がって見えるのが特徴です。
原因としては副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の分泌異常、セレニウム、亜鉛、マグネシウム、ビタミンA、B群、C、E類の不足、ストレス等によって起こります。
近年は化学合成系の育毛剤や発毛剤、シャンプー等が原因で起こる事もあり、時には頭皮が赤みを帯びたり、進行すると頭皮が硬化してきます。
2.脂性のフケを伴う脱毛
大きく分けると、単なる皮脂分泌過多症による毛包機能低下と、そこに雑菌が繁殖して起こる脂漏性皮膚炎によるものがあり、いづれも脂っこい、しっとりとしたフケを伴います。
皮脂分泌過多症によって起こる脱毛は、一般に脂漏性脱毛症とも呼ばれ、異常に分泌する皮脂が老廃物や雑菌等と混合し、固脂を形成し、毛穴の開口部から毛包を埋め尽くし、毛髪の生長を妨げるものと、皮脂腺から下降し、毛球に沈着し、過酸化した皮脂によって毛髪の生成と成長が阻害されるもので、痒みを伴い、頭皮全体が脂ぎっているのは初期症状で、進行すると脱毛して薄毛、禿になっている部分は逆に脂っこさがなくなってきます。
原因として、コーヒー、トウガラシ等の刺激物、豚肉や牛肉、鶏肉等の脂身、ココアやカシュー、ピーナッツ等のナッツ類、その他飽和脂肪酸系の食品の摂り過ぎやストレス、アドレナリン作用によっても起因し、性格的に気性の激しい人も誘発されます。
皮脂過多症になりやすい要因を持つ人が誘発しやすいのが、脂漏性皮膚炎です。
何の前触れもなく、前頭部から天頂部にかけて激しい痒みを伴い、脂性のフケが異常に発生し、洗髪すると頭皮が赤く見えます。
洗髪した翌日には再びフケと痒みが出てしまい、非常に治りにくい皮膚炎のひとつで、毛穴の開口部が赤く腫れて毛包まで炎症を起こし、化膿する場合もあります。
進行してくると症状が徐々に下降し、耳、額、顔面まで移動し、希にマユ毛までフケが発生し、その頃になると脱毛症状も重症になります。
男性ホルモン(テストステロン)の刺激で起こるとされる内因性のものと、皮脂過多症が原因で誘発され、雑菌が繁殖して起こるものがありますが、難治な脱毛症の部類になります。
3.薄皮が剥がれるようなフケを伴う脱毛
薬害から発生するものと、角質サイクルの歪みによって発生するものがあり、薬害によるものは肌に合わないパーマ液やヘアダイ液、その他化学薬品によるかぶれによって起こるもので、大きめのフケやカサブタ状のフケが出て頭皮が赤くなり、時には痛み、痒み、炎症を伴い、その部分の頭皮が薄くなったような状態になります。薬害が強い場合は、毛包や毛乳頭まで侵され、脱毛につながる場合もありますが、一過性のものが多く、肌に合わなかった薬物を中止すれば大半は自然治癒します。近年、薬害でなくとも同じような症状を呈して、脱毛を伴う場合がありますが、これは基底層から角質層に至る表皮への角化サイクルが、副腎皮質ホルモンの分泌異常、ストレス等により歪みを生じ、正常に角質化しないうちに表皮が落ちるのが原因です。
C頭蓋骨の骨格に起因する脱毛
一般的に骨格性脱毛症と言われ、頭蓋骨が異常に発達したり、部分的に突起することにより、頭皮が引っ張られ、毛細血管が圧迫されて起こる血行障害が原因となる脱毛で、遺伝的要素があります。
頭皮は頭蓋骨が遺伝やその他の要因で大きくなったり、突起してもその分だけ細胞の分裂増殖が進行し、頭皮自体の面積を増やし、対応するという事はありません。その為に常に頭皮全体、あるいは部分的に頭皮が引っ張られるような状態になり、わずか8〜10ミクロン程度の毛細血管は簡単に押しつぶされてしまい、毛乳頭への血流が阻害され、毛髪の生成と成長に影響を及ぼします。
部分的に前頭部や天頂部、後頭部が突起していれば、皮膚割腺の縦のラインに沿って頭皮が引っ張られ、側頭部が突起していればその部分と周囲の頭皮が引っ張られるような状態になり、ケガ等で頭蓋骨が変形したり、手術の縫合による瘢痕で頭皮が盛り上がっている場合も、同じような結果になります。
本来、人間には恒常性維持機能があり、細胞分裂の盛んな青少年期は頭皮機能が活発に働きます。特に真皮自体に組織層の厚みがあり、弾性、柔軟性によって血流の恒常性が保たれている時期は、あまり表面化して症状が表れません。
しかし、化学合成系のシャンプー剤や育毛剤、発毛剤等の長期間使用による頭皮組成蛋白の変成や、紫外線によるフィブロブラストの機能低下、その他諸々の要因により皮膚組織の細胞分裂が低下し、その結果、真皮層の厚みが減少し、頭皮は弾性、柔軟性を失い、細胞血管の血流が充分に確保できなくなり、症状が表面化してきます。
このタイプの脱毛症は近年増えている傾向にありますが、遺伝性、一代退化型、誘発型の要因が絡み合って起こる非常に難治な脱毛で、育毛剤や発毛剤の効果に期待を持てる範疇ではなく、対症療法の発想では殆ど太刀打ちできません。
D頭皮の過度な緊張による脱毛
ここに面白い実験法がありますので、皆さんも試してみて下さい。
まず、机を前にして椅子に腰をおろして下さい。机の上にある物をじっと見下ろすようにしていて、前頭部に手を当てて置いて下さい。次に頭部の角度はそのままにして視線だけを上にして何かを見て下さい。この時に、前頭部に当てて置いた手が額と共に吊り上がり、前頭部から天頂部にかけて頭皮が硬く緊張しているのが解るでしょう。
このように、パソコンやパチンコ、読書等で視線を固定していたり、度の合わない眼鏡を長時間使用したり、近視、乱視を治癒せず目を酷使続けると、頭皮が硬化し、前頭部から天頂部にかけて血行障害が起こり、メラニン色素を大量に消耗することから、白髪も増えます。
特にパソコン(液晶モニターは別)は、長時間に及ぶと電磁波の影響で真皮層における腺維質が破壊されたり、基質が減少する為に真皮層の厚みが無くなり、弾性を失った頭皮は硬化します。
更に、過度に交感神経が緊張することから、アドレナリン作用により頭皮に直結する顔面の表情筋、浅頭部における筋肉群、首筋から肩にかけての筋肉群が硬直し、毛細血管の収縮も起こります。
以上、コンピューターを中心としたデスクワークにおける頭皮の緊張について述べましたが、頭皮の緊張はこの例ばかりではなく、過労、酸素欠乏、食事内容、更に闘争本能、逃走本能、精神的な緊張の連続からも起因します。
昔から、よく笑う人は禿げやすいと言われていますが、どのような根拠で言われているのかよく解りません。多分、笑うと表情筋の動きの為に前頭筋が圧迫されて血行障害を起すと言うのが理由ではないかと思われますが、このような俗説に振り回されず、大いに笑って表情筋を動かし、前頭部から天頂部の頭皮の可動を促がす方が、廃用性萎縮の予防になります。
「笑う門には髪来たる」、腹の奥から笑うことによって「気」を充実し、おおらかな心になれば、セロトニン、β・エンドルフィンの分泌が高まり、脳からはα波も発生し、副交感神経支配の脳に切り替えることによって、毛髪の生成は良くなります。
E毛髪の固着力減退による脱毛
毛髪を常に一定方向に引き詰めていたり、毛髪の重量や機械的な張力等で長期間、毛髪に負荷を与えていると、徐々に毛包が引き上げられ、本来は毛髪のクッションの役割を担う毛根鞘の固着力が減退する為に、部分的な脱毛や薄毛を引き起こします。
1.髪型に起因する脱毛
大相撲の床山さんは、鬢付け油というチックのように固い油性の整髪料をつけて「大銀杏」を結い上げますが、毛髪の長さによる重量、結髪の際、毛流に逆らう方向への張力は「ざん切り」にも増して、強い負荷を毛包に与えます。
この負荷が長期に及ぶと、毛根鞘の固着力も限界を超え、前頭部、側頭下部、後頭下部に力士独特の脱毛を起こし、薄毛になります。
では一生、このように脱毛が進行して行くのかと思えば、決してそのような事はなく、引退して部屋の親方やテレビの解説者になっている人達を見れば解るように、フサフサとした毛髪に戻っているか、あるいは年齢相応の退化型に禿げていて、一般人と全く変わりありません。
明かに一過性の脱毛、薄毛で、このような脱毛を結髪性脱毛とも言い、近年は若い女性にも増えています。一例を挙げれば、
◎ 長期間分髪線を同じ位置にして梳かしていると、毛包に負荷がかかり、分髪線周辺部が脱毛している人を見かけます。
◎ 湿気があると毛表皮がどんどん水分を吸着し、毛髪の重量も増えます。更に、肩まで届くようなロングヘア、ワンレングス等のヘアスタイルにしている人達は、毛髪の重量による張力を受け天頂部や、分髪線の付近が薄くなってきます。
◎ 最近は、額や目尻、頬のシワ、あるいは垂れ目、下がり眉をカバーしようと、毛髪 をバックに引き詰め、ヘアバンドで止めたり、ポニーテールのようにして後頭上部で 束ねた髪形をしている人がいます。その為に常に張力がかかる部分が脱毛したり、薄毛 になります。
2.トリコチロマニアに起因する脱毛
トリコチロマニアとは、抜き毛癖を言いますが、何らかの精神的なショックによって深層心理にインプットされた潜在意識が呼び起こされ、無意識に毛髪を強く引っ張って抜いてしまうという行動が起こり、その為に脱毛症になることを指しますが、短期間で終わってしまう人もいれば、半年、1年と長引く場合もあります。
トリコチロマニアは、全体の毛髪を引き抜く人はほとんどなく、耳後部や後頭部、天頂部等を引っ張っても、比較的強い痛みの出ない部分の毛髪を集中的に引き抜き、その行動は希に日中も起こす人がいます。
このようにして、常に毛髪を引っ張っていると、弱い毛髪は毛切れを起こすか、前述したように毛包の固着力が弱まり脱毛を起こしますが、困る事に毛包の固着力の減退と共に神経の伝達機能も低下し、引っ張っても強い痛みが感じなくなってしまう為にいつしか毛髪を引っ張っている事への罪の意識が薄れ、潜在意識の中にインプットされている恐怖感や苦しみが、毛髪を引っ張る事によって癒されるという意識が潜在意識の中に芽生えてしまう事で、こうなるとトリコチロマニアは長期化します。
これだけで済んでいれば、まだ救われるのですが、エスカレートし過ぎて毛根鞘まで引き抜いてしまうと、二度と毛髪は生えてきません。
トリコチロマニアは一種の心身症ですから、心身症や神経症も患ったことがない素人が、浅い知識でカウンセリングを行なうと、深層心理にインプットされた潜在意識を次々に呼び起こし、逆に回復が遅れたり、症状を悪化させてしまう事がありますので、くれぐれも「生兵法は大怪我の元」と言う事を肝に銘じて、慎重に取りかかるよう願いたいものです。
F頭皮温度の低下による脱毛
外気温は、冬の寒い日で零下を割る日があるかと思えば、真夏の暑い日には40℃を超えることもあり、年間を通して体温の36.5℃を超える日は真夏の数日間しかなく、大半は体温をはるかに下回る日の方が多く、酵素の働きが低下します。その為に我々は衣服を身に付けるのですが、衣服を身に付けることのない頭皮は、毛髪と皮脂がその代役を務めています。
風邪を引いて病院に行くと、お医者さんは「症状がおさまるまではお風呂に入らないで下さい」と言います。これは、風呂上がりの湯冷めの事もありますが、皮脂を洗い落としてしまう為に起こる体温の低下を警告しているのです。
このように、体表で補いきれない範囲の体温の変化は表皮を通して末梢神経が脳に伝達し、その状況に応じて視床下部が自律神経を駆動し、体温より高温の場合は汗を出し、体内の熱を放散します。逆に体温より低い場合は、起毛筋を収縮し毛穴をつぼめ、鳥肌を立てて熱の発散を押さえ、更に筋肉を震わせ熱を発生しますが、天頂部のように筋肉のない皮膚組織は、熱細胞の働きによって自熱を発生します。禿げている部分を触ると、その部分だけ熱を感じるのはそのせいなのです。
低下した体温の調節を行なうのは、交感神経の働きによって行なわれますが、その時の伝達物質はノルアドレナリンで、強い毒性を持ち内臓障害を誘発する要因を持つほか、末梢血管を収縮させ毛母細胞、毛包組織、毛乳頭組織の働きが低下します。
以上述べてきたことは、通常の湿度の条件下の事ですが、シャンプー後や汗、雨などで濡れて頭皮や毛髪に水分が残留していると、その水分が蒸発する際に気化熱を奪われ、更に頭皮温度が低下します。従って、朝シャンをして水分が取り切れない髪のまま出勤したり、汗をかいている状態を自覚しないでかつらやウィッグ、帽子等を装着していると、これらの原因は更に悪化します。
そこに風が当ると、風速1mにつき約1℃の割合で体感温度が低下しますから、夕立の後、東風の吹く日の外出、あるいは窓を全開した車の長時間運転や、夜間の外出等もこれらの事を考慮する必要があります。
G雑菌の繁殖及び皮膚炎による脱毛
2〜3日間、洗髪をしていない毛髪が雨で濡れたり、スポーツをして大汗をかいたり、あるいはシャンプー剤がないからと、温湯だけで洗髪をすると、数時間も経たないうちに頭皮が痒くなったり、悪臭を放つようになります。
これは、皮脂と共に排泄された老廃物に水分と体温が加わり、表皮や毛表皮に付着していた雑菌が繁殖する好条件を作った為に起こるもので、昔から「髪の毛は雑菌の巣」と言われる所以でもあります。
頭皮がこのような状態の時、痒いからと爪で引っ掻いたり、硬いブラシでガリガリと掻いたりすると、頭皮に傷が付き、そこから雑菌が侵入し、炎症を起こしたり、皮膚病を誘発します。
傷が浅かったり、炎症が一過性で済めば問題はないのですが、そこから連鎖球菌やブドウ球菌等の悪性の化膿菌が侵入すると、丹毒症状を引き起こしたり、敗血症になることもあり、表皮のみでは治まらず、真皮まで侵され、時には毛包炎を起こして脱毛症につながります。
このような場合は、例え疾病が回復してきたとしても、かさぶたやフケが残り、その部分の細胞が壊死していますから、瘢痕性脱毛となって新毛の蘇生は難しくなります。
通称「じゃりっ禿」と言われ、衣類を虫が食い荒らしたような脱毛痕を見ることがありますが、乳幼児の頃、化膿菌が毛包にまで侵入し、毛包組織を破壊した為に起こったもので、火傷や怪我等で毛包組織を破壊したのと同様、永久にその部分の発毛は不可能です。
アトピー性皮膚炎は、自己の体内から排泄された化学合成物質によって真皮まで侵されそこに雑菌が付き炎症を起こすものですが、最近は単にアトピー性皮膚炎ばかりではなく、その炎症が毛包に及んだり、更に化膿菌の繁殖から毛包の組織破壊を起こし、脱毛を起こす人が増えています。
Hシャンプー剤による弊害
従来から、シャンプー剤はカチオン系、アニオン系、非イオン系等、洗浄作用上の分類によって選択され、香料、保存料、色素等の添加物の有無によって安全性が確認され、更に配合されているヘアケア成分で良否が決められていました。しかし、本当に髪を大切にする方、発毛、育毛をなさりたい方はこの三つの要素に惑わされず、シャンプー剤の原点である洗浄基材(洗浄成分)に何が使われているかを見極める事が必要です。
洗浄成分によってはどんなに優れた発毛剤や育毛剤を使おうと、思うような効果が出ないばかりか、異常脱毛を誘発し、逆効果になる場合があり、又、それを使用していた理容師、美容師の人達も手掌に難治な皮膚障害を起こし、その業を去って行った方もいるという現実を改めて考慮する必要があります。
従来のシャンプー剤は成分の約70%が水で、残りの30%が洗浄成分、その中の数%に添加成分が入っているのですが、最も問題になるのは洗浄成分で、現在、市販されているシャンプー剤の大半は、石油類から作られる化学合成界面活性剤が用いられ、石鹸シャンプーと言われるものには苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)あるいは苛性カリ(水酸化カリウム)と植物油から成る洗浄成分が用いられています。
化学合成界面活性剤は、皮膚や毛髪に与える影響も多い事から、他の添加物と共に厚生省は法定表示を義務付け警告をしてきました。特に「ラウリル(ラウレス)硫酸塩類」は「肌を荒らす」「毛髪を痛める」「育毛障害がある」という、大変ショックな警告がありながら、その弊害までは我々には周知されていなかったようです。
更に恐ろしい事に、90%も皮膚内に残留し、血流に乗って卵巣や精巣に届き、卵子や精子に影響を与え、不妊症の原因になったり、血液中の成分を破壊し、ガンを始め、様々な病気の原因を引き起こし、悪い事に生体内ではこれらの物質を分解して解毒する酵素がない為に、体内に残留してしまうということで、すでに多くの消費者は知っています。
又、化学合成界面活性剤は蛋白質の溶解、凝固、あるいは強い脱脂力、他の分子との分離作用等が表皮の角質層の組成を損傷させ、オイルゾーンを押しのけ真皮層内に蓄積され、コラーゲンやエラスチンを作り出す繊維芽細胞の蛋白組成と細胞間にある脂質セラミドを変性させ、頭皮は柔軟性、弾力性のない硬い組織に変化して行きます。
こうなると真皮層はおろか、皮下組織の血流、リンパ流、組織液の流動性が失われ、毛組織と毛乳頭組織の機能が低下する為に、毛髪の生成がスムーズに行なわれなくなります。
石鹸シャンプーの洗浄成分となる苛性ソーダや苛性カリはアルカリ金属元素の水酸化物からなり、いずれも強いアルカリ性を示し、皮膚や毛髪などの組織に対して強い作用を呈し、腐食させることで知られていますが、これ等の性質から、皮脂を根こそぎ洗い落としてしまうことで、頭皮温度を低下させ、角質層の損傷を招き、フケの発生や雑菌の発生による皮膚のトラブルを起こし易くなります。特に頭皮、毛穴に存在する皮脂を除去してしまうと、防御機能が断たれてしまうと、発毛剤やヘアダイ液、パーマ液等、その他の化粧品類に含まれる化学合成物質はもろに頭皮を直撃し、毛包、毛根鞘、毛母細胞、毛乳頭に浸透し、これらの組織の蛋白組成を変成させたり、損傷させる為に毛髪の生成力が低下し、異常脱毛、薄毛の原因になります。
このシャンプー剤は、必要以上に毛髪を膨潤させる事から毛表皮や毛皮質の組織結合や組成が弱まり、毛皮質内に存在するケラチンやシスチン、その他の間充物質の流出を招き、従来は一方的に高齢が原因とされていた、細毛、薄毛、ハリやコシの無い髪の原因にもなります。その為に酸性リンスが必要となるのですが、肝心の洗浄成分がこのようなものでは何を付加しても一過性の対症法に過ぎず、洗髪の際目にしみる、肌が荒れる等々、様々なトラブルも生じています。
最近は天然のようなイメージを与える医薬部外品(薬用)のシャンプー剤が出回っているようですが、医薬部外品のシャンプーは必ずしも天然とは言えません。なぜなら、角質サイクルを遅らせるジンクピリチオン(ピリチオン亜鉛)と殺菌を目的としたピロトンオラミンからなる化学合成成分を混入しなければ認可が得られません。しかも全成分表示の必要がなく、実際には何が混入されているのか消費者には全く解りません。
オールパーパスシャンプー「彩乃」と発毛補助シャンプー「デオコ・S2」はこれ等の有害洗浄基材を用いず、ヤシ油脂肪酸とコラーゲンあるいはシルクに洗浄機能を持たせ、弱酸性を保持し、頭皮や毛髪の健康を阻害しないという基本的な特徴があり、技術者の手を荒らすことなく、リンスの必要もありません。
「彩乃」はベーシックなシャンプー剤として、業務用まで揃え、「デオコ・S2」はビフィズス菌、大豆イソフラボン等の発毛、育毛成分、ケラチン、コラーゲン等の毛髪肥育成分、キトサン、ヒバマタ等のトリートメント成分が配合され、発毛、育毛を促しながら、頭皮、毛髪の健康を維持します。
I5α−リダクターゼの過剰分泌による脱毛
昔から脱毛症と言えば、「男性ホルモン過剰」「遺伝」「神経の酷使」を挙げ、これらは体内に起因するものとして、育毛剤や発毛剤の効果が無かった時の申し開き、即ち責任回避の「三神器」として使われてきました。
特に前頭部から禿げ上がっている人達に対しては、ひげが濃い、体毛が濃い、頭皮が脂ぎっている、セックスも強い等々...「男性ホルモン過剰」という原因を持ち出すにはもってこいの好条件があったのです。
しかし、この条件を備えながらも禿げないでいる人達は納得できない話しで、私自身もこのような悪条件を備えていながらなぜつるっ禿げにならないのか大変悩んできました。
ところが、近年になってドイツの学者によって、男性ホルモン「睾丸より分泌されるテストステロン」そのものには毛髪の生成を阻害する作用はなく、皮脂腺より分泌される活動型の酵素「5α−リダクターゼ」とテストステロンが結合すると、生理作用の強い5α−ディヒドロテストステロンに変化し、毛髪の生成を阻害するという事が解ったのです。
ディヒドロテストステロンは、テストステロンに水素が2個ついたもので、その作用は強く、毛乳頭を始め、毛包の周囲に組織される毛細血管を収縮させ、毛母細胞の分裂を抑制し、毛包を萎縮させ、毛髪の生成を阻害したり、異常脱毛を誘発します。
多くの化学者達は、テストステロン、5α−リダクターゼの分泌を抑制したり、阻害する作用の研究は進んでいますが、未だ異常分泌の原因、要因に関する研究においては打つ手がないようです。
J免疫機能の異常による脱毛
我々が細菌や微生物と共存していられるのは、免疫機能のお陰です。
免疫とは人体を守る防疫機構のひとつで、疾病や感染症に対する抵抗力を示すもので、自己と非自己の異種の高分子物質(抗原)、即ち細菌や微生物などの体内侵入に対して、リゾチューム、トランスフェリン、補体、インターフェロン、マクロファージ、好中球、リンパ球などが働いて、抗体を形成し、再び侵入する抗原を阻止し、排除する働きを言います。
ところが、この免疫機能がある種の原因によって、本来保護すべき毛包を、他から侵入してきた異種の物質と、とんでもない判断ミスを犯し、免疫細胞(リンパ球細胞)が自己の毛包を攻撃してしまい、その為に毛包の機能が低下し、毛母細胞の核分裂も低下することから脱毛を起こし、発毛不全に陥ります。
現代の医学界では、難病のひとつと言われる全頭脱毛、悪性脱毛の原因はこの免疫機能の異常が原因であるとして、副作用、リバウンドの強いステロイド療法から、極く最近はDPCP/アセトン溶液を使った治療法に切り替えている大学病院が増えています。
DPCP/アセトン溶液は本来、医薬品ではなく化学物質の一種で、治療を開始する時に本溶液を皮膚の一部に塗布し、免疫細胞に感作させた後に、脱毛部分にも塗布し、毛包を攻撃している免疫細胞の標的を変えさせ、毛母細胞の分裂増殖を正常に導くもので、塗付した部分が糜爛し、組織破壊を起こすのではないかと懸念する程の強い炎症と痛みを伴います。
K「かつら」「増毛法」「植毛」が及ぼす脱毛
自ら天頂部をカミソリで剃り、丁度カッパのような頭にして、その上にカツラをのせて、自社ブランドまで持ち営業してきた38年間の経験とその実績の積み重ねにより、かつらに関してのノウハウは知り尽くしているつもりです。私が経験上知り得た事を包み隠さず申し述べますので、参考にされれば幸いです。
冒頭にお断りしておきますが、他社の製品方法等については全く興味が無く、詳しい事は知りませんので、自社製品、方法に関しての事と、発毛ドックの現場で知り得た事を述べるわけですから、他社の製品や方法を誹謗したり、中傷したりするつもりは毛頭ありませんので、くれぐれも誤解されぬようお願い致します。
◎かつら
かつらには、血管が無い、血液も流れていない、毛穴も無い、従って頭皮温度の調節作用ができないという一大欠点があり、更に最近のかつらはベースやネットの素材が全て石油化学合成品であるという事が、様々な問題を生んでいるのです。
頭皮とネット、人工皮膚の間には隙間があり、空気の層が存在し、断熱効果がある為 最初、装着したばかりは、冬期は暖かく、夏期は涼しく感じます。ところが、しばらく装着していると、かつら自体には体温調節の機能はありませんから、空気の層が暖められ、頭皮温度が上昇する事から、頭皮温度の上昇を食い止めようと、恒常性維持機能の働きで盛んに汗を出し、うつ熱を放散しようとします。
頭皮温度の上昇と汗と空気の層が、あたかもスチーマーをかけ加蒸したのと同じよう 状況を作り出し、毛穴と毛表皮を開かせてしまいます。この状態をムレという表現をしますが、大抵の場合、数時間、長い人は1日中、装着したままという人もいます。
こうなると毛穴どころか毛包、毛根鞘まで開いて毛髪の固着力がどんどん低下します。
それに加え、毛穴が開く事により老廃物や化学合成毒素を排泄し、かつらのネットや人工皮膚、あるいは頭皮に付着し、残留します。かつらと頭皮を洗浄し清潔に保っていれば良いのですが、頭皮を毎日洗う人はいてもかつらを常に毎日洗う人はほとんどいません。その為に雑菌が繁殖し、毛包炎を起こし、脱毛する場合があります。
更に、一日中同じ温度の場所にいるという条件を持っている人はほとんどなく、ムレた頭皮が冷やされると皮膚温度の低下が起こり、頭皮機能が低下し、脱毛を引き起こします。
装着の方法は、大別するとピン、接着剤、ゴム等のバンド、編み込みの4つのタイプに分けられます。
まず、止め金具を使用する方法ですが、かつらの内側に金具を取り付け、この金具で自毛の残っている部分の毛髪を挟み込み、かつら全体を支えるわけですから、自毛にはかなりの負荷がかかります。従って毛切れを起こし、金具の当たる部分が禿げてしまって、その部分の毛髪に金具が挟み込めなくなり、金具の位置をかえたり、場合によっては作り変える事もあります。 又、金具は金属製という性質から、接触している頭皮が部分的に体温が低下し、それが原因で脱毛する場合もあります。
次に、貼り付けてかつらを保持する方法ですが、両面テープ、もしくはペーストと言われる接着剤をかつらの内側に貼り、又は塗布して頭皮に貼りつけるようにして装着します。
この方法は、古くからある装着方法で、全く毛の無い部分に貼りつけた場合は溶解剤を使用すれば簡単に剥がれますが、なまじ毛髪が残っているところへ接着してしまうと、溶解剤を使用しても容易に剥がれず、無理に剥がそうとすると自毛まで引っ張って抜いてしまう事があります。
更に、常に接着している部分は皮膚呼吸が妨げられ半端ではないかゆみとなり、そのかゆみは付けた人でなければ理解できません。
かつらを付けている人が、新たに作り替える時に分かる事なのですが、3年、5年と付けている人は大半の人が天頂部の禿げている部分が後退したり、全体に広がったりして、現状の大きさでは足らなくなり面積を広げて作り替えています。
後退の度合いは人によっても多少の差はあるものの、1年間で平均すると約5mm、早い人で1cm程度後退します。更に頭皮が白くフヤけたようになり、毛髪は細く弱々しくなり、最悪の場合は赤ちゃんの産毛のように退化してしまう人や発毛不全になる人もいます。
特に、人工皮膚のみで作られたかつらは重量もありますので、このタイプのかつらを着用している人はかなりこの症状が強くなり、外すのが面倒とばかり、夜も付けたまま寝てしまう人は、更にダメージがひどくなります。
このような状態ですから、いくらモデルとはいえ、もはや限界と思い遂にかつらを付けるのを止めてしまったのです。
ウィッグの大半は、ネット全体をゴムで編み込み伸縮されるものと、耳後部をバンドで伸縮するものとがあり、長時間着用すると頭皮に血流障害を起こし、脱毛の原因になります。
全頭脱毛や悪性脱毛の方がウィッグを付けていながら、「発毛ドック」を行った場合、発毛するまでの期間が長引いたり、発毛不全の原因になる場合があり、発毛した毛髪の成長に不完全な時期に装着していると、ウイッグのネットでこすれて毛切れを起こす原因になります。事実、重ね重ねお願いしたのにも拘わらず、ウィッグの装着を止めることができなかった為に、発毛不全となった例が過去には数例ありました。
毛乳頭に直結する毛細血管は、頭皮へのほんのちょっとした重量、圧力でも血行障害を起こしてしまい、極端な言い方をすれば、頭皮に手を乗せておくだけでも血行障害は起こります
◎増毛法
正しくは、結髪増毛法と言います。
増毛法の起源は、かつらのベースに毛を結着させる方法から転じたもので、20年程前に行っていた事がありますが、発毛が信じられず躊躇している人がその場しのぎで行なう、いわば粉の様に粉砕した毛を振り掛けるのと同じ感覚で行って来たというのが実状でした。
正常な毛髪は、1ヶ月に約1cm程度伸びます。今、仮に増毛法をしたとすると、自毛の成長と共に、結着した毛の結び目も1ヶ月後には約1cm程度、頭皮より上にあがってきます。最初のうちは、スムーズにとけた毛髪が、1ヶ月も経過する頃から、梳かす度にブラシやクシにその結び目が引っ掛かり、結着した毛が取れてしまいます。その為に、結着部に特殊な接着剤を塗布するようにしたのですが、結着した毛が取れなくなった代わりに、肝心な自毛の方が毛切れを起こしたり、脱毛してしまい、3ヶ月を過ぎる頃からは増毛する以前より薄毛になってしまいます。
この件に関しては、お客様から大変お叱りを受け、再度増毛を勧めても「お金ばかりかかって自毛が薄くなってしまうから、もう二度とやりません」という方ばかりで、現在は全く行っていません。
◎植毛
植毛とは、頭皮に化学合成の人工毛を埋め込み、あたかも毛髪が生えているように見せかけるものですが、毛髪の毛根にあたる部分が球状になっているものとV字型になっているもの、輪になっているものがあり、毛根に当たる部分を頭皮に埋めこみ、固着させます。
甥の場合は、300本程植毛して2〜3日経過した頃から、植毛した部分が猛烈なかゆみに襲われ、かきむしった部分が炎症を起こし、化膿してしまいました。「もうこんなものやめた」と、私の目の前で植毛した毛を全部むしり取ってしまったのですが、その後、1週間もたたないうちにかゆみ、炎症、化膿がなくなっていました。
毛髪は、頭皮であればどこでも構わず生えているというものではありません。全て毛穴から生えているのです。
毛穴と毛髪の間には、毛根をすっぽりと包み込むような形で、毛包が存在しています。
毛包の最も大切な機能は、外部からのあらゆる刺激を緩和し、雑菌や異物の侵入を阻止し、毛乳頭の正常な働きを維持する事が第一に挙げられます。仮に毛包がない事を想定して、いくつかの問題点を挙げてみます。
外気温が冷えてくると毛髪自体の温度が下がり、低下した温度を毛髪が伝導し、直接、皮下組織を冷やします。逆に、外気温が高いとその温度で皮下組織の温度が上昇します。人間の体温は36.5℃を中心に、下限35℃上限38℃以内で生理機能が安定して作動しますから、頭皮もこの温度の範囲を越えてしまうか、又は低下してしまうと、酵素の持つ触媒作用が低下し、毛乳頭組織そのものの機能低下を誘発します。当然、他の正常な毛髪の生成、成長にも影響がないとは言い切れません。毛包が無いという事は、防御壁としての役目も無いわけですから、あらゆる刺激を受けやすく、雑菌の侵入も阻止する事ができず、炎症や化膿となって現れます。
これらは、理・美容の作業中、誤ってカットした毛が、手などの皮膚に刺さり、炎症や化膿を起こすのと同じと考えられ、その為に雑菌の温床になりやすいキューティクルのある人毛を避け、人工毛を植毛するようになったのでしょうが、毛包がない限り、皮膚の中に異物が入れば、毛髪であれ人工毛であれ、「トゲ」が刺さっているのと理屈は同じで、この部分が毛穴だった場合は、発毛が困難になります。
日常何気なく行っているブラッシング、整髪、洗髪、カット、パーマ等の施術、くせで毛髪を触る、毛髪を引っ張る等々...これらは全て毛根に負担をかけ、毛流に逆らって毛髪を動かしている時は、更にその負荷は増大します。この様な状態が常に繰り返されていれば、大抵の毛は抜けるか、切れてしまいます。その例として、乳幼児、寝たきり老人の後頭部や側頭上部の脱毛、切れ毛がありますが、健康な毛根はこの程度の負荷では異常は起こりません。これらは、毛包のクッションとしての緩衡作用が固着力と復元力を保っている為です。
近年、健康な組織を切り取り、脱毛部に移植する生毛植毛法なるものが一部の族にもてはやされているようですが、脱毛症の原因、要因は頭皮、体内、心の在り方、環境の悪化によって起こるものです。ましてや、廃用性萎縮からなる一代退化現象という致命的な起因を持つ頭皮は、どのような優れた理論からなる対症療法を行なっても、喜びは束の間、いずれ退化という運命にあります。頭皮を傷つけ一時的な喜びを持つ事がどれ程の価値があるのでしょうか。多分に決定的な発毛法が無い事に対する苦肉の策と受け止めています。
毛髪を始め、人体にあるものは何ひとつ不要なものは無く、必要があるから付いているのであって、何かが欠ければ連係の生理機能が低下し、様々な障害が起こります。
又、その逆に不要なものや異物が侵入すると、徹底してそれらに抵抗し、身を守り、その結果様々な症状を呈するのも、人間の生理という事を忘れないで欲しいのです。
◎心理的なマイナス要因
健康で正常な毛髪の生成と成長を願い、実践現場で得た、発毛以外の禿、薄毛に対する対処法を述べてきましたが、まず第一に挙げられる事は、自毛でない事に対しての深層心理の不調和です。次に、実践においての違和感と、欠点に対する不満、更に実践してしまったことに対する苦悩があります。
かつらをつけた、増毛をした、その当初は大抵の人は一時的に満足されますが、人の目や人の言葉が気になり出したりし始めると、「かつら」や「増毛」、「毛」という言葉を聞いたり、文字を見ただけでもその場から逃げ出したい心境になります。
しかし、一旦これらの方法で周囲の人達にフサフサした毛量の自分を演出してしまった手前、引くに引けない状況に追い込まれ、満足の日々から苦悩の日々に変わってしまいます。
更に周囲の人達は、それを知っているのにもかかわらず、知らぬふりをしている苦悩、本人は知られまいと周囲に気を使い、あたかもガン患者を抱えている家族のような心理状態が、周囲に波紋を投げかける事があります。
私は、この様に本人を始め、周囲の人達も巻き込んでしまった儀髪への苦悩に対し、深く反省の念にかられています。
あらゆる角度から検討しても、自毛にかなうものはありません。私の体験上からの結論は、万人の願望「永遠の黒髪」は「発毛ドック」以外に成すものは無し、より多くの人達を苦しめる前に、早期の手当てをしてあげたいものです。
(2)体内の生理機能の低下及び異常に起因する脱毛
自然治癒力発毛法とは、人間の持つ本能的な治癒能力を利用し、これらの細胞の働きを正常に導き、組織や器官の生理機能を活性化し、発毛を促すことです。
生理機能を正常にし、活性化するということは、心身共に健康になるということであり、本発毛法の「真の健康を取り戻し、発毛を促す」という主旨に通ずるものです。
「真の健康とは、自然治癒力によって取り戻された健康のことで、対症療法や化学薬品で得た、一時凌ぎの健康とは異なる」なぜならば、これらの治療法は根本的な治療にならないばかりか、化学薬品による副作用やリバウンドの影響を受け、逆に心身の正常な生理機能に障害を起こし、毛髪の生成も阻害します。
真の健康を阻害する要因は、化学薬品や化学合成物質ばかりではなく「心のあり方」「環境」などにも起因し、これらに対応して生活していく上での「自己管理の不適切」にも起因します。
従って、健康な毛髪の生成は、自然治癒力の活性と共に、真の健康を阻害する原因や要因を断つことが基本となりますが、これらに起因する脱毛は生理機能の低下や異常が直接の原因となって起こる場合と、それを回復させようとして働く恒常性維持機能によって、間接的に引き起こされる場合があります。
@冷え、低体温
(3の1図)に示すように内臓は38℃前後、肝臓は特に高く39℃前後、体表の腋下では36.5℃、口中や肛門等では腋下より0.5℃程度高く、頭皮は36℃というように、人間の体は組織により固有の体温を保ちながら、生命活動を行っています。
様々な原因、要因から、この体温のバランスが崩れると「冷え」「ほてり」「冷え性」「うつ熱」「発熱」等の症状が表れてきます。
※医学的に「低体温」とは、直腸において測定した体温が36℃以下とされていますが、日本発毛協会では、あえて「酵素の働き」を考慮し、直腸以外の体温も同様に解釈しています。
一般に「冷え」とは、上半身と下半身、体表と深部など温度差のバランスが崩れた状態を言いますが、拡大解釈をすれば、頭表皮と皮下組織の温度差、基礎体温と生活体温の差も「冷え」と言えます。
「冷え性」とは、冷えを自覚できる体質の人が訴える症状の事で、例えば「足腰が冷える」「手足が冷える」というように、体の一部が冷えている事を感じ取れる人で、症状としては軽い方と言えます。
ところが、冷えが強くなると、その感知能力が低下したり、麻痺したりして冷えている事が感じ取れなくなり、更に冷えていると早く元の体温を取り戻そうとする恒常性維持機能が働きかけ、逆に熱細胞の働きで部分的な熱を発生させ、「ほてり」や「冷えのぼせ」という現象が表れます。上半身や頭部にだけ汗をかく人、手や足に汗をかく人、寝汗をかく人、ラーメンなどの熱いものを一気に食べると頭から湯気が立つ程汗をかく人、真冬でも布団から足を出さなければ眠れない人、耳や顔面がカッカッと熱を持ったように感じる人、禿ている部分を触ると熱を持ったように感じる人、等々...これ等は全て「冷え」の極限、「ほてり」からくる「冷えのぼせ」の現象です。
この「冷え性」「冷え」「ほてり」が慢性化し、体全体が冷えきってくると基礎体温が常に34〜35℃台の「低体温体質」化し、生活体温は基礎体温とあまり差がなかったり、逆に36.8〜37℃以上と高くなる場合があります。
更に冷えが進行すると、体の深部、即ち内臓や骨まで体温が低下し、特に骨まで冷えてくる事を「真の冷え」といい、短期間では回復する事が困難になり、骨髄まで冷えてくると造血作用による赤血球の増殖が低下し、貧血を起こすようになり、個々の細胞に酸素を充分に送る機能が低下し、毛母細胞の働きが低下する為、毛髪は細く弱々しくなり、最悪の場合は生えても伸びずにポロポロと抜け落ちるようになります。
A咀嚼不足
咀嚼とは食べた物を歯によって、細かく噛み砕き、消化吸収を高めることが目的ですが、意外と充分な咀嚼をしないまま嚥下(飲み下すこと)してしまう人が多過ぎます。胃は消化活動が目的で、食べ物を細かく噛み砕くということは出来ないのです。
消化を助ける分泌液のひとつとして唾液があります。
唾液は耳下腺、舌下腺、顎下腺からの消化液と口中粘膜から分泌された粘液が混合されたもので、消化酵素プチアリンを含み、食べ物の中にあるデンプンを糖質に変える働きがあります。
唾液の分泌は、自律神経との関わりが深く、脱毛や薄毛で悩んだり、クヨクヨしていると、それ自体がストレスとなり、唾液の分泌が減少し、食欲が減退したり、味覚も低下することから、食べ物がおいしくないという現象も現れます。
充分に咀嚼すると唾液と食べ物が混合され、消化力が高まることから、胃腸の負担が軽減され、腸内においては悪玉菌の発生が抑制され、ビヒズス菌などの腸内善玉菌の働きが活性化し、吸収作用も向上します。
咀嚼運動は、視床下部の生きる本能から起こるもので、これらは消化器を刺激し、胃の蠕動を促し、セロトニンの分泌を促し、セロトニンは交感神経を抑制し、副交感神経の働きを活発にします。
消化器系の臓器は、副交感神経の支配によって活性化する摂理があることから、食欲の増進、消化吸収が更に高まります。
セロトニンは交感神経の興奮によって引き起こされる、アドレナリン作用も抑制することから、毛細血管の収縮、頭皮筋組織の緊張が解かれ、毛髪の生成が正常に行なわれるようになります。
咀嚼を充分に行うことは、食べ物を味わうということにも連なり「美味しい」という味覚が五感に伝わり、快感神経を刺激する。快感神経はドーパミンの分泌を促し、身体の生理機能を活発にし、βエンドルフィンの分泌も促します。βエンドルフィンは、痛みや苦しみを抑えるほか、免疫力を高め、老化を防止する作用があります。従って、一代退化現象である脱毛症や禿の予防には、極めて有効です。
B消化機能の不調
咀嚼によって細かく噛み砕かれた食べ物を嚥下運動によって食道から受け取り、一時的に溜めておき、その間に消化活動を行なうのが胃です。
胃腺からは、PH3程度の塩酸、ペプシンやリパーゼなどの酵素からなる胃液が分泌され、胃の蠕動が加わり、食べた物を吸収され易い流動状に分解します。分解された食べ物の一部は、胃、大腸からも吸収されますが、大部分は小腸から吸収され門脈に入り、身に付く栄養となります。
胃の機能障害には、「胃拡張」、「胃アートニー」、「胃下垂」、「胃酸過多症」、「無胃酸症」、「胃炎」、「胃潰瘍」、「胃窄孔」、「胃癌」等がありますが、「胃窄孔」を除き、総て、私が過去に体験した胃の病気で、激しい胃痛や背中の痛み、食欲不振、嘔吐、おくび、下痢などの症状が現れ、身に付く栄養が充分に吸収されない事から、栄養障害を併発し、体重の減退、倦怠感、脱力感、無気力などが現れ、毛組織や頭皮機能に障害が起こりフケの多発、頭皮の痒み、異常脱毛、薄毛になります。
元を正せば、暴飲、暴食、睡眠不足、過労、ストレス、過度な喫煙、飲酒等が引き起こす障害ですが、原点は不充分な咀嚼にあります。これらの要因を無視して、やたらに薬で抑えていても解決にならず、ましてや、胃がすっきりするからと、制酸剤やPH値の高いアルカリイオン水を飲むという行為は消化する為に強い酸を分泌するという本来の胃液の目的を無視したもので、このような行為を続けていると益々、胃液の酸が強くなり、胃壁が損傷してきます。私はこの繰り返しを長期間続けていた為に、とうとう胃癌になってしまったのです。
本来持っている自我の強さが他力本願を引き起こし、自己管理を無いがしらにした結果で、昔からある養生の心得、「胃薬より寝薬」「年齢の数だけよく噛んで食べる」「食に感謝して食する」「食べ物は空きっ腹を満たすものにあらず、生命の元と考えよ」、更に「親が死んでも食休み」という大切な事を忘れていたものと反省しています。
C栄養の吸収力の低下
小腸には十二指、空腸、回腸からなり、咀嚼、胃の働きによって消化された食べ物から栄養の吸収を促す為に、蠕動運動を行ない、腸腺からは消化酵素を含むアルカリ性の消化液を分泌します。
消化酵素には、蛋白質をアミノ酸に分解する「エレプシン」、脂肪を脂肪酸とグリセリンに分解する「リパーゼ」、糖質類をブドウ等に分解する「マルターゼ」「ラクターゼ」「インベルターゼ」などがあり、分解されたそれぞれの栄養素は、腸壁の粘膜にある絨毛から吸収され、門脈を経て体内に取り入れられます。
栄養の吸収力は、腸そのものが正常に機能しているか否かにかかってきますが、それ以前の問題として、消化が充分に行われていること、腸の温度が正常域にあること、消化器系が正常な自律神経の支配下にあることが条件となります。
子供の頃、母親から「お腹を冷やしちゃいけないよ」「あまり、冷たい物を飲んだり、食べたりしてはいけないよ」「寝冷えするといけないから腹巻きをしなさい」と細々と胃、腸の養生法を教えられてきたはずですが、親から離れて暮らすようになると、すっかり忘れてしまい、不摂生の連続、このようにして胃腸を冷やしてしまうと、消化液に含まれる消化酵素の働きが弱まり、食べた物を分解して栄養として吸収する能力が低下します。従って、毛乳頭に運ばれる栄養も不足がちになり、必須アミノ酸と呼ばれる「リジン」「トリプトファン」「ヒスチジン」「フェラニルアニン」「ロイシン」「イソロイシン」「スレオニン」「メチオニン」「バリン」が不足すると、毛髪の生成が弱まり、産毛のように退化してしまうか、毛切れによる全頭脱毛が誘発することがあります。
D貧血
貧血とは、骨髄で作られる赤血球及び、その成分であるヘモグロビンが諸々の原因で血液中に減少している状態を言いますが、貧血が起こると肺から取り入れた酸素の運搬機能が低下する為に組織の酸素不足、エネルギー不足が起こり、体内の生理機能が低下するばかりか、毛髪の生成にも悪影響を与えます。
貧血を起こしていると、めまい、立ちくらみ、動悸、頭痛、耳鳴りなどが起こり、起床が辛い、午前中はパワーが出なくてやる気が起きない、やたらに生欠伸が出るという症状を訴えます。爪を見ると外側に反っていたり、爪そのものが脆くなり、一部が欠損したり、あるいは爪半月が全く見えなくなり、一見栄養障害と見間違う症状が現れますが、顔面の赤味が消え失せ、精気のない顔になり、更にアカンベーをさせて下瞼を見ると、極く薄いピンク色か白くなっているので分別がつきます。
このような状況のもとに生成された毛髪は、毛表皮がもろく、キューティクルが剥がれ易くなり、毛髪そのものの感触もザラついてきます。又、フィブリル、マトリックスの不足、ポリペプチド鎖の結合が弱くなっている為にパーマのかかりが悪く、しかも持ちも悪くなり、毛髪にコシとハリも無くなってきます。
当然、毛髪の生成力も落ちますから、正常な毛髪が生成されず、細毛、薄毛の原因にもなります。
赤血球は鉄、蛋白質、ビタミンB12、葉酸などが主成分で、ヘモグロビンは鉄を含む有機色素と蛋白質によって組成されていますが、これらに含まれる鉄が肺胞から取り込んだ酸素と結合して酸化ヘモグロビンというかたちで酸素を運びます。
この事から「貧血には鉄分を」「鉄分が不足すると貧血になる」という事が言われていますが、ビタミンB12、葉酸の不足によっても貧血は起こります。食生活を改善し、ビタミンB12、鉄を多く含む豚や牛のレバー、葉酸と鉄を多く含むほうれん草、その他緑黄食野菜、豆類などを多く摂ると良いのですが、貧血は複雑な要因が絡んでいることが多く、薬で治るような簡単な病ではなく、長期化するのも特長です。
E肝機能障害
肝臓は胆汁を生成し、三大栄養素の消化、吸収に関与し、人体内の有害物質を破壊して無毒化を計り、エネルギー源の貯蔵に係わる臓器で、毛髪の生成に重要な役割を持っています。
糖質は小腸から吸収される際、酵素の働きによってブドウ糖に変えられ、血液中に送られ、エネルギー源となり、体温維持の為の熱を発生させます。
余ったブドウ糖はグリコーゲンに変え、肝臓に貯わえられますが、この時に必要な物質が膵臓から分泌されるインスリンですが、冷え、ストレス等が原因で、血液中のブドウ糖とインスリンが合成されないと血液中にブドウ糖が増加し、血糖値が上昇し、尿からも排泄されるようになります。
この状態が長引いてくると、糖尿病という診断がされ、毛乳頭へのエネルギー供給が思うように行なわれなくなる為に毛根が痩せ衰え、糖尿病独特の異常脱毛が起こり、最悪の場合は産毛のように退化します。
肝臓は別名、「沈黙の臓器」とか「我慢の臓器」という表現をしますが、我慢にも限界があり、毎日過度な飲酒で糖分の過剰摂取を繰り返していると肝臓、膵臓共に疲労し、肝機能に障害を起こすようになります。何事にもほどほどにという摂生も必要です。
又、昔から「怒りは肝を破る」「心毒」という言葉があるように、ストレスやアドレナリン作用を起こすような「心の在り方」は肝臓には大敵です。この複雑な世の中に「大らかな心」で生きようという事は無理かも知れませんが、実は肝臓にとってこれ以上の良薬は無いのです。
F腎機能障害
生体の維持に大きな係わりを持つ肝臓と共に、腎臓の機能は毛髪の生成、生長に重要な役割を持っています。
腎臓の主な働きは血液の浄化で、その機能は糸球体というろ過器にあります。
組織や細胞からの老廃物や不用物質は、リンパ管、静脈によって運び出され、腎臓で浄化され、尿と共に体外に排泄されますが、1日に浄化される血液の量は大人で約180リットル、何とドラム缶1本分にも相当します。
動脈血は有害物質や老廃物が含まれず、サラサラと流れることによって毛乳頭に純粋な血液成分を届ける事ができます。しかし腎臓に機能障害が起こると、血液が充分に浄化されず、血液中には老廃物や不用物質が残留し、純粋な血液成分を運ぶのを阻害され、生理機能が低下します。当然、毛乳頭に運ばれる血液も汚濁し、毛母細胞には栄養と酸素が充分に供給されずに、これらの不用物質が混入し、再供給される事になります。
従って、生体のエネルギーは弱くなり、体温も低下し、更に毛母細胞の働きも低下しますから、毛髪の成長が止まったり、毛髪そのものの本数も減少します。
G便秘
大腸は結腸、直腸、そして盲腸からなり、食べ物から栄養を消化吸収した残りカスから水分を吸収して、固形化した便に形成し、排泄させることが基本的な働きですが、飲食物に混入されている化学合成毒素や体内毒素、老廃物も便と共に排泄されます。
腸腺からは、副交感神経の働きかけにより粘液が分泌され、便の腸内通過が保たれますが、ストレスやアドレナリン作用、冷え、低体温等で交感神経が興奮すると、副交感神経の働きが弱まり、セロトニンの分泌が抑制され、腸線からの粘液が減少する為に、便の腸内通過がスムーズにいかず、便秘を起こします。
大腸内に便が滞在する時間が長くなると、便から水分が吸収され硬くなる為、腸内通過が著しく阻害され、頑固な便秘を引き起こします。こうなると、化学薬品の力を借りる事になりますが、薬の力で排便の癖をつけると、自らの力で排便するという本来の機能が低下するばかりか、少なからずや薬害やリバウンドの影響が発生します。それに加え、最も恐ろしいのは、腸内に滞在している便から、当然なら排泄されるべき、化学合成毒素や体内毒素、老廃物等の再吸収で、血液に乗って体内に逆送され、あらゆる生理機能を低下させ、毛髪の生成、毛髪の質感に異常をきたします。これの影響を受けている毛髪の検査をすると、黒く、凸凹の激しい毛根を検出することが多く、これは化学合成物質による蛋白組成の破壊が原因です。
毛髪の生成に対して便秘と同じような阻害を起こす原因に、宿便があります。
栄養の大部分は小腸壁にある絨毛粘膜から吸収されますが、ストレス、冷え、低体温、アドレナリン作用等の原因で小腸の蠕動運動が低下したり、絨毛の微細運動が低下すると、吸収されない栄養の残留物質がタール状に形成され、絨毛に付着します。
このタール状の物質を宿便と言い、徐々に体内に再吸収される為に生理機能を低下させたり、毛母細胞の働きを低下させます。
H腎虚症
適度な性行為は大脳新皮質の働きを抑え、精神安定剤的な役割を果たし、より良い夫婦関係を保つ上でも重要な事ですが、受け身となる女性の欲求不満による脱毛がある一方では、過剰供給による男性の脱毛もあり、これが漢方で言うところの腎虚症です。
日本人男性は1回の射精で約3ccの精液を放出し、その行為で消耗されるエネルギーは50〜75キロカロリーといますから、25mを全速力で走ったのと同じ位のエネルギー損失で、その程度では毛髪の生成にはあまり問題はないと思いますが、ここで考えなければならないのは、精液の中に含まれる栄養の損失です。
精液は精子を育む養液で栄養価が高く、約90%は水ですが、残りの10%に各種アミノ酸、ビタミン・B2、B12、C、コリン、蛋白質、果糖、乳酸、各種酵素類を含めると、約45種類の栄養素が含まれます。特にアミノ酸類の中で、イソロイシン、ロイシン、バリン、リジン、フェルアラニン、トリプトファン、メチオニン、スレオニンからなる必須アミノ酸の過剰放出による体内保有不足は、毛髪の生成を著しく阻害し、コリンの減少は副交感神経の働きを弱め、ビタミン・B2、Cの減少は交感神経を高ぶらせて、毛乳頭の毛細血管の血流を低下させ、頭皮を硬化させ、毛髪の生成に悪影響を与えます。
正常な体力を持っている人、それに見合った充分な栄養を摂取していれば問題はないのですが、体力の弱い人、年齢に逆比例するような性行為の回数等が原因となり、人によっては脱力感、無気力、うつといった腎虚症として現れ、これが又、脱毛を引き起こします。
従って、「禿に助平が多い」「禿はセックスが強い」という言葉が生まれたのでしょうが、「過ぎたるは及ばざる如し」、何事も適度な振る舞いが健康につながります。
しかし、現代の若者は、毛髪も薄く、体毛が薄く、セックスも弱いという人達が急増しています。化学物質とストレスが原因と言い切っているのは、私だけでしょうか。
(3)心と脳・神経にかかわる脱毛
@アドレナリン作用が毛髪の生成を阻害する
自律神経系の働きを簡単に表せば、興奮の刺激を伝達する交感神経と興奮を抑制する指令を伝達する副交感神経からなり、車に例えれば交感神経はアクセル(GO)、副交感神経はブレーキ(STOP)のように相互する作用が一対のバランスを取りながら、生理機能をコントロールしています。
交感神経は主に内臓、血管壁、皮膚、汗腺、分泌腺などに広く分布し、一般的には毛髪を始め、生体を活動的に支配する働きがあります。副交感神経は呼吸器、消化器、循環器などに支配し、心臓に対しては抑制的に、胃腸の運動に対しては促進的に作用し、血管拡張、瞳孔縮小、温熱発汗などを司っています。
神経の興奮、つまり情報を伝達するのは、神経電流と称される0,15ミリアンペア程度の微弱なパルス性の電流によるものと、ホルモンから成り、ホルモンはペプチドと呼ばれる小型タンパク分子とアミノ酸の分解物質アミンによって構成されています。毛髪の生成と深い関わりを持ち、心の在り方によって毛髪の生成を阻害するのがアドレナリン系のホルモンです。
アドレナリン系のホルモンは、恐怖のホルモンと呼ばれる「アドレナリン」と、怒りのホルモン、闘うホルモンとも呼ばれる「ノルアドレナリン」がありますが、いずれも副腎髄質で生成され、副腎髄質と連なっている交感神経の刺激によって分泌され、通常では毛髪を始め、ほとんどの生理機能を活発にさせる活動型のホルモンです。
常に平常心、平穏心を保って生活し、自律神経のアクセルとブレーキのバランスがコントロールされていれば問題はないのですが、人間である以上、そうもいきません。
あまり良い表現ではないのですが、双方が些細な事から争いを始め、今すでに殴り合いの喧嘩が始まろうとしています。
大脳新皮質の司る知性や品性は消え失せ、大脳辺縁系の情感が優位に立ち、大脳辺縁系は生きるという人間の本能を司る視床下部に、闘うということと身を守るという体制を作る指令を与えます。視床下部は交感神経に働きかけ、アドレナリン系のホルモンを大量に放出します。
交感神経の伝達物質アドレナリン系のホルモンを受け取った体内の組織や、器官の機能は次のように変化し、戦いに備えます。
1. 相手の動きを見据えるために視神経を刺激し、瞳孔を開かせる。
2. 身構えをする為に全身の筋肉が引き締まる。その結果、眉毛は吊り上がり、肩、首の筋肉が硬直し、頭皮も緊張し硬化する。起毛筋は収縮し、怒髪天をつく。
3. 怪我による頭皮の摩擦を軽減する為に皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を盛んにする。
4. 骨格を動かそうとする筋肉が大量の血流を必要とする為に心拍数を上げ、心臓をフル稼働させる。更に大量のエネルギーも必要とする為に、膵臓に働きかけ、グリコーゲンを分解し、ブドウ糖に変え、血糖値を上げる。ブドウ糖をエネルギーに変換する為に大量の酸素が必要になることから、呼吸数を上げ、呼吸が荒くなる。
5. 怪我による出血を最小限に押さえる為に、末梢血管が収縮する事から血圧も上昇す
る。
しかし、このような時は、消化器と泌尿器だけは例外に、交感神経が抑制的に、副交感神経は興奮的に働きます。つまり「腹が減っては戦ができぬ」「戦の最中は、大小便の排泄もままならず」という本能がアクセルとブレーキを逆作動させるのです。
この生理現象を「アドレナリン作用」ともいいますが、喧嘩ばかりではなく、常に髪の事で心配していたり、その為にイライラしていたり、脱毛に対する恐怖心を持ち続けていたり、あるいは毛髪とは直接関係がなくとも、性格的に業が強く、常に周囲に不満を持っている人、被害妄想に陥りやすく、常に脅迫観念から逃れられない人、ストレス源が山積みになっているような職場でやむを得ず働いている人等々...挙げていったらきりがない程、様々な条件下でアドレナリン作用を受ける人達が増えています。
Aストレスが毛髪に与える影響
ストレスとは我々人間を取り巻く、外部からのあらゆる刺激に対して神経が働き、ホルモンの分泌を調節して、これらの刺激に対して調和しようとする生体の反応を言います。
例えば、暑さ、寒さ、風雨等の気象の変化、埃、汚染物質、タバコの煙、異臭、細菌等の感染等々...生活環境から受ける刺激、人間関係のもつれからくる悲しみや苦しみ、怒り、そして毛髪の薄い悩みや脱毛の恐怖等々...精神的に受ける刺激も全て、ストレスとして生体反応を起こす原因になります。
しかし、徐々に適度に受けてゆくストレスは回帰作用、恒常性維持機能の働きで逆に免疫力、抵抗力、気力を生み出す根源となり、生きてゆく上においては必要不可欠なものとなります。
同じストレスを受けても、強く感じる人と感じない人、体内では生体反応が起こっても知らずにいる人がいますが、これは感受性の問題で、ストレスを平穏心で受けとめられるか、否か、ストレスに免疫を持っているか、否か、あるいはその時に自然治癒力が低下しているか、否かで、感受性が異なってきます。
発毛を通じて言える事は、現代の若い人達はストレスに弱く、容易に生体反応を起こし、簡単に毛髪にダメージを与えてしまうというのが特徴ですが、根源には、過保護からくる気力の弱さ、現代社会が作り上げた虚構の情報に振り回されることにあります。
ある日、突然貴方の髪が大量に抜け始まったと仮定します。
日に日に増していく不安、夜も眠れない状態です。この時、貴方の脳は大変な刺激として受けとめ、既に生体は、強いストレス反応を起こし始めています。
脳からは強い毒性反応を持つノルアドレナリンが分泌され、交感神経に支配された脳は興奮状態になり、何事にも敏感に反応し、神経過敏症の症状が現れ、睡眠も妨げられます。一方ではアドレナリン作用で毛細血管が収縮し、毛乳頭組織への血流が悪化し、益々脱毛が進行してゆきます。
こうなると、精神状態の不安定から不眠症、倦怠感、食欲不振、便秘、ヒステリー、不快感等の不定愁訴を訴えるようになり、病院に行くと「自律神経失調症」という、原因の不明瞭な病名が宣告され、精神安定剤や抗うつ剤の投与を指示されます。
このような状態が続くと、脳が必要以上に活発に働き、大量のエネルギーを消耗することから、この反応に対応しようと恒常性維持機能が他の組織や器官から血液を始めとする体液を脳に供給しようとします。とりわけ脳に近く、しかも直接生命に関わりのない頭皮や顔面への血流は、総頚動脈で振り分けられ、毛乳頭組織への血量が減少します。
この結果、顔面が蒼白になったり、頭皮温度、内臓の温度、下肢の温度が低下し、体温そのものも低下します。体温が低下すれば受容体における触媒機能を司る酵素の働きが低下します。頭皮の温度が下がれば、毛髪の生成が正常に行なわれなくなり、内蔵の温度が低下すれば毛髪の生成が弱まり、下肢の温度が下がれば全身の血流が悪くなるという悪循環が発生し、更に脱毛は進行します。
一方、交感神経は脳下垂体を刺激し、甲状腺ホルモン、消化管ホルモン、性ホルモン、副腎ホルモンなどの内分泌系に異常をきたします。
とりわけ、毛髪の生成に関わりの深い、甲状腺から分泌される成長ホルモン、副腎皮質から分泌されるコルチゾール、卵巣から分泌されるエストロゲンの分泌の減少は、毛母細胞の核分裂を低下させたり、毛周期の短縮をさせたりするばかりでなく、頭皮に弾力を与えている真皮層組織の大部分を占める繊維細胞フィブロブラストの増殖が低下することから、頭皮は薄くなり柔軟性が失われてゆきます。
更にストレスから身を守ろうとするアドレナリン作用の影響を受け、皮脂腺の活動が活発になり、皮脂が必要以上に分泌される為に毛穴から正常に分泌されず、一部毛包に残留した皮脂が固脂を形成し、毛包を詰めるという結果が生じ、毛髪の生成を促そうとする連携プレーも正常に機能しなくなります。
B強迫観念が脱毛を悪化させる
強迫観念とは、ある事がきっかけで不安な感情を持ち、早く忘れよう、考えるを止めようとしても常に心にまとわりついて頭から離れない状態を言いますが、この症状が悪化すると、非常に不快な気分になり、自己嫌悪に陥ったり、不条理と分かっているのにもかかわらず、感情や行動が自分の意志に反して現れる「強迫観念神経症」になることがあります。
例えば、貴方が突然、異常脱毛になり、大量に毛髪が抜け始まったと仮定します。どうしようという不安感がエキサイトし、ツルツル頭の己の未来像を想定します。「でも、よく考えてみれば父親は禿てないし、自分は若い、しかもまだ充分に髪の毛は残っている、そんなに心配する事はない」と、自分に言い聞かせ、その場は冷静さを取り戻します。
しかし、意識の一部にはツルツル頭の未来像がインプットされていますから、一寸としたきっかけ、例えばテレビや雑誌で脱毛、禿、あるいは発毛剤や育毛剤の文字が目に入っただけでも、自分の未来像を連想し、恐怖感に襲われます。そして、その一方では「まだ心配するな」という意識が働き、心の中で葛藤が始まり、心臓がドキドキしたり、呼吸が苦しくなることもあり、非常に不安な気分になります。
そうなると、毛髪の悩み事ばかりではなく、次から次へと自分で不安材料を抱え込み、一寸の事で心臓がドキドキしたり、何も意識していないのに突然、恐怖感に襲われるという「不安神経症」になります。それがエキサイトしてくると、人に会うことが嫌になったり、怖くなったりする「対人恐怖症」あるいは幻覚、幻視、幻聴等の症状が起こり、強度のヒステリーや精神分裂病に発展します。
その上で、死の事を考え、死後の事まで考え、恐怖感に戦くようになると「うつ病」に発展します。いずれの発症もアドレナリン作用の連続ですから、内臓機能の低下、ホルモンの分泌異常によって毛髪の生成は正常に行われません。
毛髪くらいで何もそこまでも、と思われる方もあるかも知れませんが、気の弱い人やうつ病気質の人は陥り易いのです。
C闘争本能に起因する脱毛
昔から「男が外に出れば、1000人の敵がいる」という例えがあります。
物や食を求めるには「いつ、外敵に襲われるか分からない」「生命の保証はない」その為に「子孫を絶やしてはならない」という本能があり、昔の武将が大きな戦いの前に性行為をして戦に臨むという話は、多くの武勇伝で知るところですが、その戦において、怪我による摩擦から身を守る為、特に生命の中枢である脳を守ろうとする本能により頭皮からは大量の皮脂を分泌させます。
皆さんも「徹夜マージャン」をした翌朝、顔が黒ずみ、顔を始め額から天頂部までベットリと脂汗が出ているのを経験した事があろうかと思います。これが闘争本能からくるアドレナリン作用による皮脂過多症の一例で、大きな金銭の動きと人間関係が加わり、闘争本能の高ぶり、自律神経の疲労も極限に達します。更に、不眠不休で働かされる脳、神経、それに加えてまともな食事を摂る時間を惜しみ、ついついインスタントラーメンなどで代用食を摂ってしまいます。これでは毛髪はおろか、心身も参ってしまい、胃腸の不調、肝臓や腎臓の不調、神経症、自律神経失調症として心身の赤信号を出すのですが、人間の欲は留まる事を知りません。誘われれば赤信号など忘れてしまい、再び徹夜マージャンのとりこになってしまうのです。
「百害あって一利無し」ということはこの事で、毛髪、心身の健康を考えれば最悪の遊びと心得るべきです。
「徹夜マージャン」に限らず、現代の競争社会で生き残ろうとする企業人、受験勉強を余儀なくされる学生、頑固一徹の御父さん達は勿論ですが、常に頭から湯気を上げて子供や御主人を怒鳴り散らしているお母さん、貴方の薄毛や禿もアドレナリン作用から起きているのです。
常に「平常心」「平穏心」を持って生活することが大切です。
D性生活の不満に起因する脱毛
性の喜びとは、意中の人と結ばれたという独占欲からの征服感、愛しているという幸福感、愛されているという満足感、そして神々が与えてくれたオーガスムスという体感が加わり、究極の快感が生まれるのです。
特に女性においては、この快感を九気の充実ともいい。肺気、心気、脾気、腎気、骨気、肉気、筋気、血気、そして歓喜というように、心と身体の全体で快感を満足してゆくのに対し、男性は期待の快感と射精時の快感のみで満足し、前戯も後戯も疎かになってしまう場合が多く、これが男と女の快感のズレを生じ、性生活の不満となる場合があります。
それに加え、現代の低欲化する性の氾濫は、男性の性知識、技巧、体験数をはるかに超えている女性も増えています。
これに対し、男性は諸々の化学合成毒素による極端な精子の減少、精力の減退、更に運動不足、コンピューター社会が作り上げてしまった頭脳労働型社会は、次から次へとストレスを生み、体力、気力を低下させるばかりではなく性欲も低下しています。
その結果、女性は慢性的な欲求不満となり、女性独得の複雑な生理機能に影響を及ぼします。この事がストレス源となり、アドレナリン作用を起こし、ヒステリーや心身症、円形脱毛や全頭脱毛を引き起こし、得てして、このタイプの脱毛症は、本能と心に動かされる生理機能が複雑ゆえ、非常に回復が遅れるということです。
E夫婦、家族内の不和に起因する脱毛
最近は、学校内のいじめが陰湿化し、その為に校内暴力、自殺、精神障害、更に円形脱毛や全頭脱毛も急増しているということを聞きます。しかし学校でどのような事があろうが、両親がしっかりとした気構えで、子供が心を割って話せる環境を作り、その心を理解しようと努力すれば、必ず解決できます。
それには、母親としての深い愛情、甘えられる温かい心、父親としての威厳、逞しさ、心の支えとなれる人格が必要であり、子供が求められている相応しい両親像です。
今、この親としてのそれぞれの立場を忘れ、役割が逆転している家庭が多くなっています。
円形脱毛、全頭脱毛で非常に回復の遅い慢性化している子供達をカウンセリングしてみると、大半がこのバランスの崩れた両親の多いのには驚きます。悪い言葉で表現すれば、母親は「世間知らずのくせに知ったかぶりのでしゃばり、挙句の果てにはヒステリー気味」、父親は「気弱で母親の尻に引かれ、何を言っても母親の意見が優先し、いつも黙り込んでいて、会話がない」というのが典型的な脱毛誘発の両親のパターンで、極論を言えば母親の「業」の強さに起因しているのです。
このような両親を持つ子供は、常に理想と現実の狭間に立たされ、徐々に人間不信に陥り、両親の言動、行動、その他あらゆる事にストレス反応を起こし、それから逃れようと暴力的に行動したり、落ち込んだり、何かに必死になって打ち込むようになります。
スポーツや自然に親しむ事で、良い汗を流して気分転換を計れば良いのですが、パソコンやTVゲームは逆に交感神経を興奮させ、症状を悪化させます。
子供の円形脱毛、全頭脱毛は家庭を見聞し、両親をカウンセリングして両親の心の病を癒すことから始まることが大切です。えてして、このような子供を持つ母親は、大半が我々の言う事を全て否定してかかる場合が多く、その場では理解したような素振りは見せるものの、心の奥底では拒否反応を起こし、家庭に戻れば又元の母親になってしまうという、非常に厄介な、しかも回復の遅れる脱毛症のパターンです。
(4)環境に起因する脱毛
@無視できない気候による要因
自律神経の働きは気象条件と大いに関係があり、暖かい日は副交感神経が働き、暑い日、寒い日、冷える時には交感神経が働き、天候の不安定が続く梅雨時期が最も影響を受けます。
このような時は、交感神経が消化器系の働きを抑制するため食欲が減退したり、下痢、便秘が起こます。
又、生体の生理機能が低下すると共に頭皮も緊張し、毛乳頭の末梢血管が収縮し、毛母細胞へ供給する血液の量も減少し、毛髪の生成を妨げます。
太平洋の高気圧が張り出して、夏になると大気が安定し気温も上昇してくることから、副交感神経も活発に働き、低迷した生理機能、頭皮、毛脂腺機能を癒してくれるようになるのですが、真夏の猛暑の一時期はその逆になります。
秋期は最も新陳代謝が活発になるはずですが、エアコンに依存し切っている現代の生活は、逆に真の疲労が回復できず、「抜け毛の秋」に拍車をかけています。
真冬は、寒冷のため交感神経が浅頭部の筋肉を収縮させ、頭皮が緊張する為に硬化現象を起こし、末梢血管も収縮し、毛母細胞の働きが低下します。
更に、木枯らしの吹き荒れる乾燥時期は保湿に欠け、毛髪はカサカサに乾燥し、切れ毛抜毛を起こし、表皮、真皮層まで水分が減少する為に、頭皮の柔軟性に欠け、頭皮温度も低下します。
草花が新芽を開かせる春期に入ると、副交感神経が活発に働き出すために、冬期の間に入れ変わった毛母細胞が活性化し、再び毛髪の生成が活動期に入りますが、このように毛髪には毛髪本来の持つ毛周期の他に、植物と同じように四季により活動の減退、増進があるのです。
これ等はあくまで自然の摂理になされるがままの状況での事ですが、人間の知恵は住まいを改良し、自然の摂理の良い部分は受け入れ、阻害性のある部分に対しては防御してきたのです。しかし、近年は職人の減少、コストの上昇で、それも不可能になっています。
A電磁波のもたらす影響
1.電磁波とは
一般家庭に送られる電気は交流と呼ばれ、時間と共にプラスとマイナスの電極が一秒間
に50ないし60回ずつ交互に変動する波を持っています。
このような周期の波を持つ電流が導体を流れると、そこには変動磁界(動磁界とも言う)という磁界が作られ、変動磁界の持つ磁力線の周囲には変位電流が流れ、電界が発生します。更に変位電流は空間に新たな磁界を発生させ、その磁界は又、変位電流を発生させるというように、次々と電界と磁界が直角に合成されながら、空間を突き進んでいきます。
この電界と磁界が合成されていく周期の波を電磁波と言い、一般的には電波という名称で広く利用されています。
電磁波は、その周期の波が1秒間に繰り返される回数を周波数と言い、Hzという単位で表され、その波の振幅の長さを波長と言い、通常の長さの単位、m、cm、mm、nmで表されています。
電磁波が空間を伝搬する時には、「直進」「反射」「屈折」「吸収」等の現象を伴い、この性質は輻射強度、波長によっても異なり、その強度は発生源からの距離の2乗に反比例し、被射体あるいは受容物質、物体によっても異なった反応を起こします。
2.毛髪と電磁波
◎生体リズムを乱す電磁波
人為的に環境波動エネルギーのレベルを超える磁界や電界、振動等が与えられたり、又そのレベルより低いエネルギーであっても、その周波数が人体の持つ波動エネルギーによる固有周波数と共振すると、原子核と電子群の集合体からなる人体は、自由電子の動きが抑制されたり、異常な加速が加わったりする為に正常な電荷の働きを失い、その結果、環境波動エネルギーによって創られた生体リズムが乱され、生理機能や代謝機能が低下し、最悪の場合はこれらのエネルギーによって毛母細胞をはじめとし、体細胞や組織の破壊を引き起こす事があります。
この事を被曝と言いますが、その電磁波が0〜3000Hzの低周波領域になると心電、筋電、神経電流等の生体電流を変位させてしまうという事は、医学会でも究明されています。
◎低周波などの周期を持つ電流を人体に直接通電した場合
昭和45年に、私が発明した低周波発毛促進器「特許○公昭和49−59491」は、低周波の刺激作用とプラス、マイナス相互イオン導入作用を利用し、育毛剤の浸透と皮膚生理の向上を行なわせるというものでした。
実施者の30%程度に発毛効果はあったものの、毛髪の成長が伴なわず抜けてしまい、私としては決して満足するものではありませんでした。ましては、神経網が存在する頭部に通電するということは、気狂いに刃物のようなもので、非常に恐ろしい事です。
しかし、企業というものはいずこも非人道的で不埒な考えを持つのが多く、その後数 社から本器の原理を真似て、同様の製品が発売されましたが、結果は皆様がご存知のように、一時的な効果と電磁波障害というマイナス要因が表裏一体となったもので、机上理論の効果だけを鵜呑みにして実行したなれの果てと、後悔しています。
現に永久脱毛というエステティック技法がありますが、その中で高周波電流を通電し、毛母細胞やその組織を破壊し、毛を生えなくする方法があります。
更に、レーザー光線を当ててほくろの色素細胞を破壊し、ほくろを除去する方法もあ りますが、これらはいずれも非熱性電磁波の破壊力を応用した方法で、これらを見る限りにおいても、電磁波が細胞や組織を変成させたり、破壊するのが理解できる筈です。
「生兵法は大怪我の元」ということわざがありますが、皆さんには私の二の舞を踏ませ たくないというのが真意です。
3.発毛ドックにおける電磁波被害の症例
電磁波の被曝は、当人には全く現実感が無い為に、知らず知らずの間に毎日長時間、しかも長期間にわたり、被曝を受けているケースが多く、特にハイパワー無線機、コンピューターを操作している人、長距離のトラックやタクシーの運転手、レントゲン技師等の人達で、前頭部から脱毛した状態の場合は、電磁波の影響をあまり受けていない人達と比べると、回復が極端に長引いたり、回復が不能になる場合もあります。
近年、急速に増加している脱毛症のひとつに、携帯電話症候群があります。
女性に多く見られる薄毛や、多発性脱毛、円形脱毛において、常に携帯電話を使用している側の耳上部周辺を中心に脱毛範囲が広がったり、薄毛になったりする症状で、他の部分に比べると、その部分の回復が遅いという例が多く、中にはその部分の頭皮に発疹や炎症を起こしている例もあります。
電磁波被曝と脱毛に関して、医学的に研究している人も無く、従ってデータ―も全く公表されていない現時点においては、この症例が医学的に認められたものかと言われれば、答えは「ノー」ですが、これらの症状を呈している人達から、電磁波の発生源となっている機器の使用を中止させたり、その他の発生源となっているルートを突き止め、使用距離を広く取ることによって確実に症状が改善されるという結果を得ています。
B加工食品
「石油と水からシャンプー剤が作れる」という事は昭和40年代には知っていましたが、自らアレルギー体質と異常脱毛に苦しむようになって、もしや食品や飲料水の中に含まれている添加物、化学合成原料にも原因があるのではと、調べていくうちに、大半の加工食品、保存食品、清涼飲料水、ドリンク剤、酒類等に有害性、毒性を持つ化学物質が含まれていることが解かり、愕然としました。しかも、その化学物質は、実験用動物のラットを簡単に病変させたり、細胞の変性を起こさせてしまう程の有害性があるのです。
人間はラットと異なり体積があり、又、法的にも添加物の許容量がある程度規制されていることから、即座に表れませんが、これらの化学物質は徐々に体内に蓄積され、体内残留毒素となります。しかも、いくら肝臓が頑張って解毒しようとしても不可能です。それは、「人間の体内には化学合成毒素を解毒する酵素が存在しない」からです。
シャンプー剤と卵白の攪拌実験でも解かるように、これ等の化学合成毒素が人体に与えるダメージの最も大きな要因は蛋白質の変性ですが、主として蛋白質と水から構成される細胞は、ダメージを容易に受けます。
その結果、ガンを始めとする成人病、精神障害、脱毛症等を引き起こす原因にもなり、その被害は子供や胎児にまで及び、総ては虚構時代の犠牲者達になっているのです。このような時代はどのようにして、心体と毛髪を守れば良いのでしょうか。それにはまず、何が有害かを見つけ、できるだけ摂取しないようにする事と不溶性、水溶性の食物繊維をバランス良く摂って体内に吸収される前に排泄するとか、天然の栄養を充分に摂って、細胞の微細運動を促し、運動をして良い汗をかいて汗口から排泄させてしまうことが必要です。
1.スナック菓子
ひと昔前は、サツマイモやジャガイモを蒸して食べさせたり、果実や野菜をジュースにして飲ませるなど、手をかけたおやつ作りをする母親が多かったのですが、近年は手をかけた割には子供達が喜ばないという理由から、おやつ代わりに清涼飲料水やスナック菓子を買い与える母親が増えています。
メーカーでは、子供達にスナック菓子を習慣つけようと、色を変え味を変え、化学合成調味料を必死になって研究し、「子供の味」を創作していますから、従来の自然の味、形、色彩では太刀打ちできる筈がなく、子供は見向きもしなくなります。
これだけでも充分に健康を損ねる要因にもかかわらず、「子供の味」はいたずらに食欲を掻き立て、単なるおやつ程度に止まらず、常にこれらの駄物(昔はこのように表現した)で満腹感を味わってしまう為に、肝心の食事が現れなくなってくる子供が増えています。
スナック菓子の原料はサツマイモ、ジャガイモ、トウモロコシ、米、小麦等の澱粉質、砂糖、塩、フライにするときの油脂分と次に示す添加物です。
◎酸化防止剤
トコフィロール
◎甘味料
サッカリンナトリウム、ソルビット
◎乳化剤
ショ乳脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなど
◎着香料
カラメル、エルダベリ―色素
更に、製造過程でビタミン、ミネラル、繊維質は殆ど破壊されてしまうことから栄養は無く、カロリーだけが高い食品ということになります。
この為に、栄養障害を起こし、円形脱毛や全頭脱毛に陥る子供達が急増しています。
2.清涼飲料水、炭酸飲料水など
近年、円形脱毛症や悪性脱毛症に患らう子供達の脱毛根を観察すると、神経的な脱毛根より、栄養障害や化学合成毒素の被害による脱毛根が多く見られます。
これらの変性脱毛根の原因として、飲・食物に含まれる化学合成添加物、及び化学合成原料の過度な摂取と思われるものが多く、その代表的なものが缶ジュースなどの清涼飲料水や炭酸飲料水と、子供達のおやつ代わりになっているスナック菓子類です。
清涼飲料水や炭酸飲料水にはどのような添加物が含まれているのでしょうか。主なものを挙げます。
◎保存料(安息香酸類)
◎甘味料(サッカリンナトリウム、アスパルテームなど)
◎乳化剤(ソルビタン、グリセリン、プロピレンなど)
◎香料(プロン酸エステル、酢酸エチル、サリチル酸メチル、バニリン、ベンズアルデヒドなど)
◎安定剤(メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム)
◎炭酸ガス[炭酸飲料水のみ](二酸化炭素)
◎被膜剤(オキシエチレン高級脂肪酸アルコール、 酸ビニル樹脂)
◎酸味料(クエン酸、リン酸、乳酸、クマル酸ナトリウム、酒石酸)
その他、強化剤、肪ばい剤などもありますが、ラットなどの実験用動物を使った実験によれば、肝硬変、染色体異常、骨格異常、脳、神経の異常、異常脱毛、子宮ガンなどの発ガン性が報告されています。
更にこれらに含まれる砂糖の弊害として肥満が取り沙汰されていますが、肥満ばかりではなく、カルシウムの破壊による骨格の異常、そのカルシウム不足に起因するストレス性の脱毛、更に糖質代謝の負担による肝機能障害に係わる脱毛、皮脂分泌過多症など、毛髪の生成に与える影響は免れません。
3.ドリンク剤
「元気が出る」「ファイトもりもり」「疲れた体に栄養補給」等々、テレビや雑誌のコマーシャルを見ていると、大半の人達は即効性のある栄養剤のような錯覚を起こしてしまうのがドリンク剤です。
長年、お茶代わりに飲んでいてガンになってしまった人、骨粗しょう症になってしまった人、歯がボロボロになってしまった人、栄養素と勘違いして食事を減らし、ダイエットに用いて全頭脱毛症になった女性、薄毛になった女性等々、心身と毛髪の健康を損ねた人達が身の回りに大勢存在し、その悲惨な状況も見ています。
私自身も疲れが取れるという事を聞いたものですから、一気に又、2、3本飲んだところ、その後間もなく全身の震えを起こし、心臓の鼓動亢進の為、息が苦しくなり、病院に担ぎ込まれた事があり、実弟も同じドリンク剤で同じような経験をしています。
健康増進の為に、又そのように思わせる宣伝、誰もが疑う余地も無く飲むドリンク剤の大半に大量のカフェインが含まれ、一時的に交感神経を刺激し、興奮状態になり、「元気が出たような錯覚」を起こすのです。
原料の大半は化学合成栄養素と甘味料、酸味料等の化学合成添加物と蒸留水にカフェインを加えたもので、製品によっては炭酸が加わり、極端な表現をすれば「化学物質と水」で作られた飲料水と言っても過言ではないでしょう。
化学薬品と同様に、長期間飲用すると自己治癒力が低下し、生理機能も低下します。従って、毛母細胞に対する有害性はスポーツドリンク剤と共に、計り知れないものがあります。
そして、「栄養は自然のものでなければ、吸収されて身に付く栄養にはならない」という事も、肝に銘じてほしいものです。
Cタバコ
目覚めの一服、食後の一服と、スモーカーにとっては最高のひとときです。喫煙は吸わない人にとってみれば大変迷惑な事には違いありませんが、スモーカーにしてみれば一種の精神安定剤的な効果があり、手軽にリラックスな感覚を味わえる行為なのです。
しかし、1日に40本、50本も吸うヘビースモーカーとなると話は別で、毛髪の生成に大変なマイナスを及ぼします。
(3の1表)のように、タバコを吸うと体温、特に頭皮と下肢の温度が極端に低下し、平常に戻るまでに、何と2時間もかかります。これはタバコに含まれるニコチンと青酸ガスによるもので、ニコチンは毛細血管を収縮し、全身の血流を低下させ、当然、毛乳頭への血流も阻害され、毛母細胞の核分裂を低下させます。又、ニコチン、タール、青酸ガスは呼吸器系の機能を低下させる為に血中酸素量が減少し、毛組織を含め、全身のエネルギーが不足します。体温はこれらの要因が重なり合って低下しますが、1日に20本以上、平等に間隔を置いて吸っていると体温はおろか、頭皮温度も平常に戻らず、常に低下したままになってしまいます。
こればかりではありません。タバコは1本吸う度に約25〜30mgのビタミンCを消耗します。通常の大人の場合、ビタミンCの平均摂取量は約125mgですから、摂取量から単純に計算しただけでも、1日に4〜5本以上吸うとビタミンC不足になります。
ビタミンCが不足すると、副腎皮質ホルモンの合成が低下し、ストレスの抑制機能が低下します。ストレス解消のつもりで吸っているタバコが、逆にストレスを生むことになります。又、ビタミンC不足は、真皮質を構成するコラーゲンの生成を低下させることから、頭皮は弾性を失い硬化します。更に鉄分の吸収が正常に行なわれない為に、毛母細胞の核分裂にも異常をきたし、薄毛、異常脱毛の原因になります。
1日に50本、100本と吸う超ヘビースモーカーは、慢性気管支炎、肺気腫、肺ガンなどを引き起こす他に、慢性的なビタミンB12不足に陥り、胃腸障害や悪性貧血を起こし、ビタミンC不足と重なり、皮膚障害や胃ガンを誘発します。
このようにリラックスを求めて吸うタバコも、度を越せばマイナス要因が多く、この要因は同室にいる他の人にも同じようにマイナスを生みます。できれば吸わない方が良いのですが、吸っても1日5本程度に止めたいものです。
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